ハイケムは2025年、2026年と2年連続で「アクアポニックス・陸上養殖設備展」に出展しています。
一見すると化学とは関係のない分野に見えますが、その背景には、長年取り組んできたCO2活用技術と、食料問題を解決したいという想いがあります。
今回は、ハイケムが陸上養殖に取り組む理由と、その先に描く未来について紹介します。
ハイケムが陸上養殖に取り組む理由
左からC1事業部 小西事業部長 李さん
ーハイケムは2年連続で陸上養殖展に出展しています。一見従来の事業とは関係のない分野に見えますが、なぜこの分野に注力しているのでしょうか?
CO2からのものづくりの一つの方向性としての「食料」への展開
(小西)ハイケムでは長年「CO2からのものづくり」の技術開発や商業展開に取り組んでいます。CO2からのものづくりを推進することで温暖化ガスの削減を促すと同時に、従来の化石資源由来のものづくりを置き換え付加価値のあるものを生み出していくといった取り組みを推進しています。
ハイケムとして、この取り組みは当然続けていくとして、CO2活用の出口として、人類により喫緊の課題である「食料」という方向性も取り組んでみたいと考えました。
例えば農作物が作れなくなるとか、魚が獲れなくなるとかそういった問題は、人類にとってすぐ来る危機なのではないかと思います。そう考えた時に、私たちが推進している「CO2からものを作る」という一つの方向性として「食料」を定義したのです。
幸い、ハイケムは古くからビタミンCをはじめとする食品添加物などを数多く取り扱っており、日中の食品業界とのネットワークも豊富です。
CO2から光合成で生み出す「微細藻類」の大きな可能性
(小西)「食料」と「有機物」という、CO2からのものづくりの出口を考えたときに、化学プロセスに加えて「微細藻類」も一つの選択肢として可能性を感じました。
展示会で紹介した「フォトバイオリアクター」のような最新の装置を利用すれば、「CO2」を原料に、光合成で高品質な「微細藻類」の効率的な培養が期待できます。微細藻類は豊富なタンパク質や脂質を含み、食品や飼料、化成品など幅広い用途が期待されています。また、CO2を資源化する技術開発の延長線上には、植物由来プラスチックなどのバイオマス素材の可能性も広がっています。微細藻類では、数多くの優れた開発が進んでいますが、 まさに、ハイケムがフォトバイオリアクターに着目したきっかけは、いかに効率的かつ経済的にCO2を有効活用したものづくりができるかを研究する中で、中国の先進的な微細藻類の培養技術に出会ったことでした。
これまで欧州を中心に開発が進められてきたこの先端技術について、中国を拠点に、コスト競争力ある製品を製造・販売する「光語バイオテック」という会社があることを知りました。彼らは中国にとどまらず中東や東南アジアなど、500か所以上にフォトバイオリアクターを展開しています。彼らと提携することで、日本でも面白い展開ができるのではないかと考えています。
そして、この「微細藻類」の出口戦略を「食料」という切り口で展開してみるともっと違う世界が見えてきます。
なぜ養殖なのか ー 陸上養殖の飼料としての可能性
(小西)食料を切り口とした微細藻類の出口は多種多様です。欧米ではDHAなどのサプリメントは微細藻類由来のものが流通しているようですし、微細藻類の残渣は肥料補助剤として注目されている、バイオスティミュラント用途としても有力な候補となっています。
そして、中でも特に期待している用途が、水産養殖用飼料です。今、温暖化などの影響により、魚粉を中心とした養殖用の飼料が年々高騰していて養殖業者の大きな負担になっているようです。タンパク質や豊富な栄養素が採れる微細藻類は、越えなければいけない課題はまだまだありますが、魚粉などの飼料の代替としても有力な候補になるでしょう。
(李)中国では、微細藻類を魚の飼料とすることで、魚の発育状態や発色が良くなったような事例も多数報告されています。現時点では魚粉よりコストが高いケースもありますが、魚の品質向上や付加価値化につながる可能性も期待されています。
中国で独自の進化を遂げる陸上養殖設備
中国の陸上養殖の現状
ー 中国の陸上養殖の現状について教えてください
中国の巨大なシーフード市場
(李)中国では、シーフード市場が大きく拡大しています。これまで海鮮料理は沿岸地域を中心に親しまれてきましたが、近年は内陸部でも人気が高まり、その需要は年々増えています。一方で、内陸まで新鮮な魚を運ぶには物流コストがかかります。そこで、消費地の近くで養殖し、新鮮な状態のまま食卓へ届けられる「陸上養殖」のシステムが自然と受け入れられ、独自の発展を遂げてきたのではないかと思います。
(小西)大規模化によるコストダウンや設備の標準化が進み、中国では価格競争力の高い陸上養殖システムが数多く商業化されています。 日本では、養殖魚は養殖コストが高くなるため、ブランド化され高価格帯で出荷されることが多いですが、中国のように「安価に販売する」ということを目的に開発された陸上養殖技術というのは単純にすごいなと思います。
「水」に対するシビアな考え方
(李)陸上養殖は「水」も大事です。日本は比較的水資源に恵まれているため、「かけ流し式」の養殖もありますが、中国の場合は「水」は厳格に管理されています。特に排水処理については非常に厳しい管理体制が敷かれています。ですから、閉鎖循環式のシステムが多く導入されており、この分野での技術の発展は目を見張るものがあります。
最先端の自動化設備
(李)先日、中国出張の際に実際に陸上養殖施設を見学してきましたが、最新鋭の設備が搭載されていてとても先進的でした。システムは無人で制御されていて、自動給餌装置や遠隔監視装置が標準装備されています。また、循環式の水処理装置のおかげで、水質や臭いの管理などもとても行き届いていたのが印象的でした。
昨今中国では「安心・安全な食品」に対して高い需要があります。ですから、養殖魚のような徹底的に衛生管理された魚やエビは高い需要があり、今後もどんどん発展していくのではないかと思います。
陸上養殖の収益力を「LED照明」で高める
(李)そして、中国で進化する陸上養殖設備の中で、ハイケムが注目したのが「LED照明」です。この設備の面白いところは、LEDが出す光の波長によって魚の成長を促進させたり、性成熟をコントロールしたりすることができる点です。
サーモンの養殖を例にとると、成長期には性成熟を抑制し「体の成長」に転換し成長を最大化させ、逆に繁殖期には性成熟を促進させ高品質な精子や卵を確保します。光の力でそのようなことまでできるようになることは本当に驚きです。光は「照らすもの」ではなく、「魚の成長をコントロールする技術」になりつつあるのです。
中国の最先端の陸上養殖設備を日本へ
ー ハイケムとしてこの業界に向けた今後の取り組みを教えてください。
(李)中国はこの分野で設備の大規模化・標準化が進んでいます。陸上養殖の分野において、我々がケミカルプラントでよく使う、「設計」から「機材調達」「建設工事」までの3工程を一貫して請け負うEPCのようなビジネスモデルが既に確立されています。すなわち、非常に効率的で価格競争力のある陸上養殖設備をワンストップで構築できるような仕組みです。
ハイケムとしてはこれらの先進的な仕組みを、導入しやすい価格帯で日本の陸上養殖の現場に紹介することで、もっと多くの養殖魚が日本の食卓に届くとよいなと思っています。
(小西)あとは、ハイケムが長年取り組んでいるCO2活用技術の新しい出口として中国の先進的な陸上養殖技術を組み合わせることで、持続可能な食料生産の新しい選択肢を日本に提案していきたいです。
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CO2を資源へ、そして食料へ。
ハイケムは化学分野で培った技術探索力とグローバルネットワークを活かし、中国の先進技術と日本市場をつなぐ懸け橋として、持続可能な食料生産の実現に貢献していきたいと思います。
今後もハイケムストーリーでは、ハイケムが取り扱う最新技術の情報をお届けしてまいります!



