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海洋が切り開く脱炭素の未来 革新技術「eDOC」が実用化へ

大気の130倍のCO2を秘めた海から、
カーボンニュートラルとグリーンビジネスの突破口を

2050年のカーボンニュートラル実現まで、あと25年。国際エネルギー機関(IEA)は、この野心的な目標を達成するには年間約10億トンものCO2を大気から除去する必要があると警鐘を鳴らしています。これまで注目されてきたのは、スイスのクライムワークス社などが手がけるDAC(Direct Air Capture)のような大気からのCO2直接回収技術です。しかし、大気中のCO2濃度はわずか0.04%であり、回収効率を高めるのが難しいという課題があります。

その中で、今注目されているのが、私たちの青い惑星、海です。地表の71%を覆う海洋には、大気の約130倍ものCO2が溶け込んでいるといわれています。この事実に着目し、海洋から直接CO2を回収する革新的な技術「eDOC(electrochemical Direct Ocean Capture)」の開発に成功したのが、ハイケムの合弁パートナーである北京のカーボンエナジー社です。

中国・広東省でeDOC(Electrochemical Direct Ocean Capture)の実証実験を実施


2025年8月に広東省で実施した実証実験の様子

2025年8月、中国・広東省の海上で、カーボンエナジー社と広東大唐国際潮州発電有限公司が共同で開発したeDOC(Electrochemical Direct Ocean Capture)システムの実証実験が行われました。

eDOCは、吸い上げた海水を電気化学的な方法で酸性化し、海水中に溶解しているCO2を放出させ、ガス分離膜を用いて高濃度のCO2を回収する技術です。CO2を抽出した後の海水は、元の弱アルカリ性に戻され、再び大気中のCO2を吸収できる状態となるため、このプロセスを繰り返すことで大気中のCO2は徐々に減少し、最終的にはカーボンニュートラルの実現が期待されます。
カーボンエナジー社は、この装置において高効率な膜技術とリアクター技術を有しており、他にはない競争力を備えています。

「プロセスがシンプルで、作業条件も穏やか。装置運転は安定し、設計要件を完全に満たしている」と、中国石油・化学工業連合会の専門家評価チームからは、この実験結果について高い評価を受けました。このブレークスルーにより、カーボンエナジー社のeDOC技術は、実験室段階から社会実装に向けて着実に前進しています。

高効率で環境に優しく、コスト低減の可能性も秘めるDOC(Direct Ocean Capture)

従来のDAC技術では、1トンのCO2を回収するのに600~1,000ドルのコストがかかるとされています。一方、eDOC技術では100ドル程度を目標にグローバルな開発が進められており、さらにカーボンエナジー社では、独自の膜技術を活用し、よりコストを意識した開発を推進し、60~80ドル程度までコストを下げる野心的な目標を掲げています。
「CO2は大量に海水中に溶解しており、海水中のCO2濃度は大気中の130倍にも上ります。そのため、コスト面での優位性は海からCO2を回収する方法の方がはるかに高いのです」と、カーボンエナジー社の康鵬CEOは述べています。

海からの回収技術:DOC(Direct Ocean Capture)

空気からの回収技術:DAC(Direct Air Capture)

長所:

  • CO2濃度が高いため高効率、省エネが可能
  • 炭素除去だけでなく海洋環境の改善も期待
  • 洋上風力の電力を利用可能
  • 余剰電力を活用可能

長所:

  • 回収方法が確立され、大型装置が動き始めている

短所:

  • 世界的に実証段階

短所:

  • コストが高い
  • CO2濃度が低く、効率が悪い

エネルギー効率についても、DAC技術と比較して30~50%の省エネが可能で、洋上風力発電など再生可能エネルギーの直接活用も可能です。陸上での土地制約もなく、昼間の余剰電力を有効活用できるなど、そのメリットは多岐にわたります。

この技術はまだ世界的に実証段階にありますが、アメリカをはじめとする各国で商用化に向けた動きが進んでおり、カリフォルニアのキャプチュラ社では2025年2月にハワイで年間1,000トン規模の実証プラントを建設しており、グローバルな社会実装が着実に進展しています。

ハイケムが描く「海洋発グリーン経済」の未来図


この革新技術を日本およびグローバルに展開するため、ハイケムはカーボンエナジー社との合弁会社「HighEnergy(ハイエナジー)株式会社」を設立しました。
ハイエナジーではCO2回収にとどまらず、回収したCO2を原料として化学品を製造し、海水から水素を製造し、洋上風力発電などの再生可能エネルギーとも組み合わせることで、完全にグリーンな化学品製造システムの構築を目指しています。

「海水からCO2を吸収し、そのCO2を原料として化学品を製造することで、環境の豊かさとビジネスの両立を実現する」

この取り組みが本格化すれば、従来の「環境対策はコストがかかる」という常識を覆し、「環境改善が利益を生む」新しいビジネスモデルの創出にもつながります。

日本政府は2050年カーボンニュートラル宣言を行い、企業各社もESG経営の推進に力を入れています。
eDOC技術は、そんな日本企業にとって千載一遇のチャンスとなる可能性を秘めています。

・化学・素材メーカーにとっては新たな原料調達手段として、
・エネルギー関連企業にとっては次世代事業の柱として、
・そして投資家にとっては成長性の高い投資先として——。

四方を海に囲まれた日本こそ、この「海洋発脱炭素技術」を最大限に活用できる立地条件を備えています。

eDOC技術への参画・導入・投資をご検討の企業様は、ハイケムまでお問い合わせください。技術説明、事業計画のご提案、パートナーシップ検討など、お客様のニーズに応じたサポートを提供いたします。

BSテレ東 サステナMIRAIにてハイエナジーが取り扱う、eDOCが取り上げられました。
放送は以下よりご確認いただけます!