HighChem Story

ハイケムの今を伝えるメディア

「計画性」の日本人と「柔軟性」の中国人が最高のチームを作る方法
ハイケム直伝 中国ビジネスマナー講座#7

近くて遠い隣国、日本と中国。 ビジネスの現場で日本人と中国人の国民性を比較する際、よく挙げられるのが「計画性」の日本人と「柔軟性」の中国人※という対比です。一見すると正反対で、時に衝突も予想されるこの二つの特性。しかしハイケムでは、この日中両国の社員が鮮やかに調和したチームを編成し、長年高い成果を上げ続けています。

性質の異なる二つの素材を混ぜ合わせ、新しい価値を生み出す――。 それはまさに、化学メーカーであるハイケムが最も得意とする「ポリマーアロイ(高分子合金)」の考え方そのものでした。

なぜハイケムでは、文化の壁を超えたシナジー創出が可能なのか。 今回のビジネスマナー講座では、日中混成チームを長年率いてきた李室長にインタビュー。異なる個性を結びつけ、最強のチームへと昇華させる「相溶化剤(架け橋)」としてのマネジメントの極意を伝授します。

多様性あるチーム運営に課題を感じているすべてのビジネスパーソンへ。最高のチームをつくるヒントがここにあります。

※個人の経験に基づく見解です

本日の話を伺った人


中国の大学卒業後日本の大学院に進学し、有機材料分野において博士号を取得。その後、日本の大手化学メーカーの研究職として15年間の実務経験を積み、2012年にハイケム入社。現在はサステナベーション本部 素材研究室の室長と、貿易本部 営業支援室の室長を兼務。

ケース1:「ベテラン日本人社員」と「若手中国人社員」の場合

李室長が管轄する営業支援室には、大手化学メーカーなどで活躍されてきた日本人シニア社員が20名ほど在籍しています。日本の大手企業で30年以上のキャリアを築いてこられたシニア社員は、中国人社員が7割というハイケムにとって必要不可欠な存在であり、日本の商習慣の伝授や若手人材の育成において大きな役割を担っています。そしてこのシニア社員のマネジメントを一手に引き受けているのが李室長。この難しいケースにおけるマネジメントの秘訣について伺いました。

――「ベテラン日本人社員」と「若手中国人社員」がチームを編成する時に、心がけていることは何ですか?


李室長 室長としての私の仕事は、マネジメントというよりもお互いの考えや立場を相互に理解できるようフォローすることです。

最近では少なくなってきましたが、以前は日本のシニア社員が中国人の若手社員に対して厳しい見方をし、それをストレートに伝えてしまうことがありました。そんな時私は彼らの考えに対して理解を示したうえで、「彼らはまだ社会人として成長途中です。ストレートに伝えるのではなく、ご自身のやり方を丁寧に教えてあげてください」と伝えるようにしました。

当社の若手社員の中には、中国の大学を卒業後、そのままハイケムで社会人生活を始める社員も多くいます。彼らにいきなり日本の商習慣を理解しろというのは無理があります。日本のシニア社員にとって「当たり前」のことが、彼らにとっては「当たり前」ではない。「まずは理解してあげて、少しずつ見せてあげて、丁寧に時間をかけて育ててあげてください」と伝えるようにしています。

ですから私の役割は「調整役」と言ったほうが正確かもしれません。双方の「不満」や「相談」に対処し、少しずつ丁寧にケアしていくことで、状況は大きく改善することが多いです。

――なるほど。両者の立場をしっかり理解してくれる方がいると、安心して働けそうですね。


李室長 そうですね。ほぼ毎日のようにこの手の相談メールが届きます。それはシニア社員の方々と率直に何でも言い合える関係を築けていることも大きいと思います。

彼らはいわばその道のプロです。皆さん経験豊富で業務面ではご自身で自走できる方ばかり。ですから私の仕事は、彼らにとって気持ちよく働いていただける環境、すなわちプラットフォームを提供することです。ハイケムでそれぞれの才能を活かして成果を挙げるためのアドバイスや提案をするよう心がけています。

シニア社員にとっても、これまで日本社会の中で過ごしてきて、急に中国人が7割という特殊な職場環境に入るわけですから不安も大きいはずです。特に入社直後はこうしたケアが非常に重要になります。

――シニア社員の話を聞くときに気をつけていることはありますか?


李室長 シニア社員の皆さんはほとんどが私より年上で経験も豊富ですから、基本姿勢は「尊敬」。本当に人生の大先輩ばかりですから。

たとえ私が上司であったとしても、人間同士の関係です。その中で指摘すべきところは指摘するという姿勢を貫いてきた結果、今では皆さんにも理解していただけるようになったと感じています。

<<李室長に聞きました!李室長が感じた日中のギャップは?>>

――李室長は30年前に来日されたわけですが、最初に感じられた日本と中国のギャップについて教えてください。

李室長 来日した30年前はまだ日本と中国の経済格差も大きくすべてを新鮮に感じました。

中でも一番感じたカルチャーショックは、自分と他人との境界線をしっかりと引いている点です。言い換えれば、「他人に迷惑をかけない」という意識、個人と個人の間に一定の距離感を保つ文化です。この点は私たち中国人とは大きく異なると感じました。

一番印象に残っているのは、大学の研究室で実験をしていた時のことです。中国では友人同士であればお互いに手伝い合ったり、夜の実験なら友達の装置を見て記録を取ったりするのは当たり前でした。

日本に来て博士課程3年生の時に、中国でやっているように先輩に頼んだところ、頼んだことはやってくれたのですが、翌日に別の用事を頼まれたんです。その時は「なぜ、自分でできることを私に頼んでくるんだろう」と少し違和感を覚えました。あとでよく考えてみると、「借りた貸しはきちんと返してもらう」ということだったのかと気づきはっとしました。

日本では安易に人に助けてもらうことはしないのかもしれない。その時初めて他人に迷惑をかけないで自分と他人の境界線をしっかり引くというのが、日本文化の非常に重要な要素なのだと理解しました。日本はチームワークを大切にする国ですが、個人個人においては非常に明確な境界線を引いている国なのではないかと思っています。

――中国人には、そのような境界線はないとお考えですか?

李室長 そうですね。中国には「お互い様」という考え方が根付いていて、多少迷惑をかけたとしてもいつか返してくれるだろうというもう少し緩やかな考え方が一般的かもしれません。

ケース2:「日本人研究員」と「中国人研究員」の場合

――李室長が従事してこられた研究職の分野において、どのような日中のギャップがありますか?


李室長 研究職においても確かに違いがあります。特に実験に対するアプローチの違いですね。

日本の研究者は実験のプロセスをこまめにメモし、記録を会社の財産として残すことを当然のこととしています。一方中国人の場合は成果主義的な傾向が強く、実験が終わって成果が出ていることが最優先で、プロセスはあまり重視しない傾向があります。

つまり日本人研究者の実験は再現性が高いのに対し、中国人研究者の実験は再現が難しいケースがあります。理由は記録の質に差があるためです。化学の実験では、実験ノートをきちんと残すことが非常に重要なのですが、この点は中国人研究者にとって課題となるケースが見受けられます。

一方で中国人研究者の素晴らしい点は、アイデアが豊富で発想力に優れていることです。実験は途中でうまくいかないことがよくありますが、中国人研究者は壁にぶつかっても、新しい発想で柔軟に対応することが多いですね。この柔軟性が時に予想外の発見やブレークスルーにつながるのです。

――李日本人と中国人の研究員チームができたら、最高の結果が生まれそうですね。


李室長 その通りです。ただそれがなかなか難しいというのも現状です。研究員の方は皆さん正直でまっすぐな方が多い(笑)。自分のスタイルを完全には変えない方が多いですね、日本人も中国人も。みんな自分を持っていて自分が正しいと思っている(笑)。博士課程まで修了している方も多いので、当然といえば当然ですが。

こちらの立場としては辛抱強く忍耐強く、お互いの立場を理解してもらえるよう働きかけるしかありませんね。

まとめ:「日本人」と「中国人」が最高のチームを作る方法とは?

――李室長が考える「最高のチーム」の作り方を教えてください。


李室長 少し私の専門の話をさせてください。私の専門はポリマーです。その中に「ポリマーアロイ」という言葉があるのですが、これは要するに、A材料とB材料を組み合わせることで、Cという新たな性質の材料を生み出すことを指します。ただA材料とB材料を単純に混ぜただけでは、反発が起こるなどして、うまく混ざらないんですね。そこで添加剤を使って、AとBの材料がうまく混ざるようにします。まさに私の役割は、この「添加剤」なのだと思っています。

この添加剤のことを、業界用語では「相溶化剤」と言います。つまり、2つの物質とは全く異なる性質のものを添加することによって、一体感が生まれたりシナジー効果を創出できたりするのです。

ただし添加剤もただ混ぜればよいというわけではありません。添加剤の選択を誤ると、A+Bの効果がマイナスになってしまうこともあるんです。だから「相溶化剤」はA+Bがうまく融合し、大きな成果を出せるような優秀な添加剤である必要があります。

ハイケムではこの「相溶化剤」の役割のことを、「BRIDGE(ブリッジ)」や「懸け橋」と呼んでいます。AとBという全く異なるものを変えることは難しい。だからこそ異なる文化背景を持つ人が集まるグループが最高のチームワークを発揮するためには、「添加剤」がどれだけ良い働きをするかにかかっているのではないでしょうか。

多様性を強みに変える――それこそが、グローバル時代のチームマネジメントの本質なのです。