新たな用途開発で今後も成長が期待される「1,6-ヘキサンジオール」
ハイケムが日本の供給体制を整備
製品名:1,6-ヘキサンジオール
メーカー名:元利化学集団股分有限公司
お話を伺った人
左:李さん
機能化学品二課の課長。2011年にハイケム入社し、営業事務を経て営業職に。部門の売り上げを3年で2倍にするなどの実績を持つ。
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右:虞さん
天津大学を学部卒業後、東京大学大学院の修士課程を修了し2018年にハイケムへ。現在は機能化学品部で樹脂原料や添加剤、ファインケミカル製品の営業を担当。
——1,6-ヘキサンジオールとはどのような製品ですか?
李 1,6-ヘキサンジオールは、様々な産業で多様な用途に使用される汎用性の高い原料です。川下の用途としては主に工業用途が多く、ハイケムの取り扱いで一番大きいのはポリウレタン用途での販売です。その他、UV硬化樹脂やコーティング材料、ポリエステル樹脂分野などにも利用されています。欧米では、保湿剤などの化粧品用途としても利用されているようです。
——ハイケムは2023年8月に中国最大メーカーと1,6-ヘキサンジオールの日本国内における販売で代理店契約を締結していますね。
李 もともと1,6-ヘキサンジオールは北米、ヨーロッパ、日本、中国などで製造されていましたが、昨年より日本での製造撤退が発表されました。これにより日本国内の供給体制に変化が生じたため、ハイケムは中国最大の1,6-ヘキサンジオールメーカーの元利化学と販売代理店契約を締結して日本市場の開拓を本格的に開始しました。
——元利化学とパートナーシップを組むことにした理由は?
李 まず、ハイケムで元利化学との取引実績があり、信頼できるメーカーであることが既にわかっていた点は大きいです。
そして、日本のお客様が中国メーカーを選ぶ最大の理由は供給の安定性です。その点、元利化学は地理的なアドバンテージがあるだけでなく、製造拠点が山東省と重慶の二拠点体制をとっているため、BCP(事業継続計画)を重視する日本のお客様から評価されています。
李「元利化学は地理的なアドバンテージがあるだけでなく、二拠点体制をとっているためBCPを重視する顧客から評価されています」
虞 また、元利化学は現在主流のアジピン酸から水添の製法を使用します。中国は1,6-ヘキサンジオールの原料であるアジピン酸の最大の製造拠点でもあるので、原料の安定調達についてはもちろん問題なく、コストメリットも出せます。
——日本国内における供給体制はどのようになっていますか?
李 関西にある加温できる貯蔵タンクを利用し日本に液体品を在庫しながら、ファインケミカルにおいて強固な国内販売網を構築している甘糟化学と共同で運営しています。
元利化学はこれまでも日本国内で1,6-ヘキサンジオールの液体品を販売していたのですが、メインはISOタンクコンテナでの販売でした。それを今回、タンクローリーでの販売も可能にすることで、ISOタンクより小さいロットでの購入を希望されるお客様への販売も可能となり、より幅広いお客様の需要に対応できるようになりました。
——他社との差別化のポイントを教えてください。
李 やはり1,6-ヘキサンジオールの日本での販売において、一番の差別化のポイントは供給の安定性だと思います。欧米のメーカーもありますが日本からは距離が遠く、BCP(事業継続計画)の観点からも日本から近い中国に製造拠点を有しているということは一番の差別化ポイントになります。
また、欧米メーカーの製法では、元利化学と異なり副産品として製造されるので、主要製品の需給の状況によっては、1,6-ヘキサンジオールの安定供給に問題が生じることもあります。
——1,6-ヘキサンジオールの将来性は?
虞 1,6-ヘキサンジオールの将来の見通しはグローバルにもプラス成長が見込まれています。そもそもこの製品は歴史が浅く、供給量が少ない時期は価格が高かったため、様々な分野で利用できることがわかっていてもコストの問題で広く利用されてきませんでした。しかし、直近では中国勢を中心にメーカーの製造量が伸び、以前はコストの問題で検討がストップしていた分野でも使いやすくなっています。そういう意味でも将来性は十分にある製品だと思います。
虞「メーカーの製造量が伸び、以前はコストの問題で検討がストップしていた分野でも使いやすくなっている」
李 そうですね。工業用途以外では、化粧品や医薬品、農薬など幅広い分野が考えられるでしょう。1,6-ヘキサンジオールの特性として腐食性がなく、揮発性が低く溶媒能力が高いという点があげられます。また、環境に配慮した製品としても評価されているので、水性塗料といった環境に配慮した製品の製造など、新たな用途開拓開発につながることを期待したいです。