中国ビジネスマナー 2024年04月04日

ハイケム社員がおすすめする『中国の観光名所・グルメ』
中国の「華南地方の観光名所・グルメ編」

第5弾は「華南地方の観光名所・グルメ編」です。出張に行くなら観光やグルメも併せて楽しみたいもの。今回はハイケム東京に勤務する広州と広西チワン族自治区出身の社員2人に協力いただきました。グルメの街として知られ、ビジネスで訪れる機会も多い広州、まだ日本では情報が少ない広西チワン族自治区の二つのエリアについて参考になる情報となっています。訪問予定のビジネスマンはぜひご一読ください。

文:瀬戸洋一



広州市出身・劉さんがおすすめする広州

劉さん
中国・広州出身。
2015年湖南大学化学工学学部を卒業後に来日し、ハイケムに新卒入社。

 
広州のおすすめ観光名所
千年の歴史を実感できる街と「干物」の街

北京路


 現代的なビルが建ち並ぶ広州ですが、最も有名な繁華街はやはり「北京路」と言えるでしょう。東京の銀座や上海の南京東路のように平日でも多くの人で賑わい、ショッピングを楽しめます。

ただ、この北京路は単なる現代の繁華街ではありません。歩行者天国の通りの途中に路面がガラス張りになっている場所があります。多くの人がガラスの下をのぞき込んでいるので、すぐに気づくと思いますが、そこにあるのは「千年古道遺跡」。千年より前の唐の時代から民国時期までのそれぞれ道路の跡だということです。それらの遺跡群を見ると古くからこの通りが栄えていたことが実感できます。

2014年にも北京路の南端で清の時代の木造船が発見されたことがニュースになりました。北京路の地下には貴重な歴史の跡がまだまだ残されているかもしれません。現代の街並みを楽しみながら悠久の歴史を感じることもできる貴重な通り。広州を訪れたらまず足を運んで路上でガラスをのぞいてみてほしいです。

一徳路


 そして、観光客にはあまり知られていない街として「一徳路」があります。たくさんの干物の専門店が並んでおり、ここ2~30年で全く変わっていないと言われますので、「昔の広州」を体感したいなら足を運ぶのもありかもしれません。

中華料理にはアワビやナマコ、ホタテなど様々な種類の干物が多く使われていますが、この街には中国産だけではなく、世界中から干物が集まり、中国でも有数の干物専門街となっています。ずらりと並ぶ干物に中華料理の奥深さを垣間見ることができそうです。

この一徳路ですが、明王朝の時は広州の南城壁が建てられていたり、清王朝の時は広東省と広西省の統括総督が住まう「両広総督府」が設置されていたりして、歴史的にも面白い街です。

また、一徳路の先には「石室聖心大聖堂」というゴシック様式のカトリック聖堂があります。19世紀に建てられた高さ60メートル近い美しい石造りの建物で、周辺の建物も含めてヨーロッパの雰囲気が味わえることもあり、足をのばしてもよいかもしれません。

 
広州のおすすめグルメ
魚料理「煎封」と地元の人が愛する飲茶の店

煎封


 「食は広州にあり」と言われるように広州は食の天国で、広東料理は日本も含めて世界に広がっており代表的な中華料理のひとつです。何を食べても美味しいのですが、私が紹介したいのはあまり皆さんに知られていない「煎封」です。魚を丸ごと大きな鍋に入れ、蓋で封じて焼く。そして、ほどよく焼き上がった魚にタレをかけて食べます。さまざまな魚が食材として使われていますが、中国で「多宝魚」と呼ばれるイシビラメの煎封が定番だと認識しています。魚のシンプルな旨みと甘辛いタレの組み合わせが最高です。レストランのメニューにあればぜひ試してみてください。

早茶


 そして広州といえば「早茶」です。日本でもシュウマイや饅頭などの点心を食べる「飲茶」は知られていますが、広州では朝食にお茶を飲みながら点心を楽しむ早茶が食文化として残っています。朝から正午くらいまで店に長く入り浸れますが、最近はライフスタイルに合わせて昼食や夕食でも提供する店が多くなりました。また、チェーン店も増えていますが、おすすめはやはり地元で昔から親しまれている店です。広州では街のあちこちに早茶の店があり、近所の人たちが常連になって家族で訪れています。広州の人に「どの店が良いですか?」と聞くと口を揃えて「うちの近くの店が一番です!」と言うことでしょう。ただ残念なことに、商業化と消費文明の波に呑まれ、個人経営の独立店舗は近年減り続けており、コロナの影響もあって、多くの店が閉店してしまいました。泊まっているホテルなどの近くに地元で愛されている昔ながらの店を見つけたらぜひ入ってみてください。

 
出張前に知っておきたい広州事情
開放的な広州人、だけど「食」への悪口はタブー!?


 私の個人的な印象かもしれませんが、中国における広州は日本で言うと大阪に似ているかもしれません。この地の広東語は中国国内で一般的に使われる公用語とはまるで別の言語のような方言である一方で、中国の人たちは昔から香港の映画や流行歌などを通して広東語に触れる機会が少なくありませんでした。日本人が漫才などを通して関西弁を知っているのに似ていると思います。

また、清王朝の時の中国は江戸幕府と同じ鎖国政策を出していましたが、広州は日本の出島のように唯一海外に開かれた貿易の窓口となった時期もありますので、外国との交易が盛んでした。

ヨーロッパ文化が入ってきた時期も早く、開放的で異文化に寛容な街だと感じています。また南という土地柄ならではの大らかさもあるように思います。ビジネスマナーの点でも、北京のような宴会での厳しさもあまり聞きません。宴会などでは礼を失しない程度にお互い楽しめばよいのではないでしょうか。

そんな開放的な広州人でも「広州の食」への悪口は怒るかもしれません。「食は広州にあり」のプライドを持っている方でしたら、口喧嘩になってしまう恐れがあるかもしれませんので、皆さん気を付けてくださいね(笑)!



広西チワン族自治区出身・虞さんのおすすめ

虞さん
広西チワン族自治区柳州市出身。
2015年に中国の天津大学化学の工学部を卒業後来日。
2018年に東京大学大学院化学生命工学の修士課程を修了後、ハイケムに新卒入社。
現在は機能化学品部で、樹脂原料や添加剤、ファインケミカル製品の営業を担当。

 
広西チワン族自治区ってどんなところ?

 広西チワン族自治区という名称は日本人にあまり馴染みがないかもしれません。中国の沿岸部で最も南に位置しており、ベトナムと国境を接しています。チワン族は中国の少数民族の中で最も人口が多く、中国では「壮族」と表記。海に面している一方で内陸は山間部が多くを占め、その地域ごとに独特の言葉や風習が残っており、多様性のある文化が特徴です。

 
広西チワン族自治区のおすすめ観光名所
ぜひ訪れたい山水画の「桂林」と「銀色の砂」の美しいビーチ

桂林


 「桂林」は必見です。北部を流れる漓江の河岸にカルスト地形による山々が連なり、日本人がイメージする山水画のような美しい景色が広がっています。世界遺産にも登録されており、世界的な観光地として人気を集めています。中国の20元札にもデザインされているので確認してみてください。桂林市内では漓江と桃花江の合流点にある「象鼻山」が巨大な象の形をしており、シンボルにもなっています。ぜひ見逃さないようにしてください。また、桂林の南部にある陽朔県からの絶景も格別です。「桂林山水甲天下」(桂林の山水は天下一)と古くから言われていますが、その続きに「陽朔山水甲桂林」(陽朔の山水は桂林一)とも。街全体が奇岩に囲まれており、景色を見ながらの街歩きも楽しめます。

銀灘


 まだ日本では知られていない広西チワン族自治区のおすすめ観光地に「銀灘」があります。こちらは海。白い砂浜が20キロ以上続くビーチリゾートなのですが、実は砂に特徴があります。ビーチを形成している砂は天然の細やかな珪砂で、日光が当たると銀色に輝くのです。石英の透明な輝きがイメージに近いかもしれません。銀色のビーチ、銀灘の美しさを求めて訪れる人も多く、コテージに滞在したり、シーフードやマリンスポーツを楽しんだりできます。中国では海南島が日本の沖縄のような人気のビーチリゾートですが、とても混雑するので、その点からも銀灘は穴場と言って良いかもしれません。

 
広西チワン族自治区のおすすめグルメ
おすすめグルメは臭い!でもやみつきになるタニシのビーフン

螺蛳粉


 広西チワン族自治区の人たちの大好物はビーフン。ビーフンの消費量も中国有数と言われています。そのビーフンの中でもおすすめは、何と言っても私の出身地である柳州市発のグルメタニシのビーフン「螺蛳粉」です。タニシから出汁をとっているのですが、独特の強い臭みがあります。その臭いのもとはタニシではなく、具材に使われているタケノコの漬物から出ているとのこと。海外で留学生がこのビーフンを料理したらあまりの臭さに警察に通報された、などという嘘か本当かわからないエピソードもあるほどです。でも味は辛さと酸っぱさがやみつきになるほど美味しく、人気料理です。カップ麺でも売られているので日本の中国食材専門店で入手できるかもしれませんが、近所に配慮して窓を閉め切って食べるのが良いかもしれません。タニシビーフンだけでなく、広西のビーフンは地域ごとのバラエティも豊富。ぜひ本場に来て食べてみてください。

ところで広西チワン族自治区の都市には、まだ路上で食事を提供する屋台が多く残っています。屋台での食事には懐かしさみたいなものもあって楽しいのですが、中には衛生状態が悪い店もあり、食中毒になってしまうケースもあるようです。地元の人にしっかりした店を教えてもらうことも大切です。

 
知っておきたい広西チワン族自治区事情
EV車の拠点や豊富な鉱物資源 中国の南の玄関口にも


 広西チワン族自治区はビジネスの面でも注目のエリアです。私の出身地は自治区の北部にある柳州市ですが、自動車産業が盛んで、最近はEV車の生産拠点として広く知られています。とくに小型のEV車の生産台数が多く、市内ではカーシェアの取り組みなども行われ、EV車を活用した新たな社会づくりも進んでいます。

産業の視点で言うと、広西は鉱物資源に恵まれていて、錫やマンガン、チタン、ボーキサイトなどの埋蔵量は中国でも有数です。また、松から採取できる天然樹脂のロジン(松やに)の生産も盛んになっています。

広西は古来から漢族も移り住み、自治区の人口に占める漢族の割合は6割ほど。チワン族など少数民族と漢族との共存の歴史も長く、異文化との交流が得意な側面も持っていると思います。中国沿岸部の南端にあり、ASEAN諸国との距離も近いことから海上物流の拠点としての整備も進んでおり、広西の人々の長所が生かされるのではないかと期待しています。

美しい自然景観や独特の美味しい料理、少数民族の文化を楽しめる広西チワン族自治区へぜひ多くの方に訪れてほしいです。


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