『ハイケムの貿易事業』日中トップ対談
——近年貿易事業の規模は拡大し続けており、東京の年間売上高は2017年からの5年間で75%増加し、上海は、5年で倍増しています。その原因は何なのでしょうか?
林本部長 東京の貿易事業規模が5年間で75%増加したのは、化学品事業を始め、医薬品原薬、農薬、電子材料など既存の事業分野を深く掘り下げたことによるものだ。特に昨年度においてはコロナ禍にも関わらず、貿易本部の全部門において予算を達成するなど、全体的にバランスの良い成長を遂げている。さらに、中国の業績成長は素晴らしく、5年で倍という大きな成長だ。これは主に成長戦略の進展の結果、すなわち業務形態の多角化にあると考えている。
龍総経理 上海支社の発展は、まずは基盤業務である輸出の規模拡大だ。言い換えれば東京本社の業務拡大による牽引効果で、年率10%程度で成長を遂げてきた。更に大きな成長をもたらしたのは、グループの成長戦略の進展による成果だ。以前の上海の業務はすべて東京への輸出によるものだった。業務形態は単純で、化学品の輸出とOEMに集中し、輸出業務だけで上海の総売上高の8割以上占めていた。10年前に林本部長が上海に出張で来られた際、「中国の支店の新たな成長エンジンを見出し、業務多角化を進展させるべきだ」との進言を受けた。これが、中国国内市場の開拓など、新たな形でのビジネス展開を推進させるきっかけとなった。そして、長年の取り組みにより、多角化の成長目標を達成し、従来の輸出業務は上海の総売上高の4割となり、残りの6割が新規事業の売上で占めるまでに至った。新規事業は規模が大きいだけでなく、成長スピードが速く利益率も高くなっている。
——2023年度からハイケムは、新たな中期事業計画期間に入りますが、貿易部門全体の今後の方向性や目標についてお聞かせください。
林本部長 日中間の化学品貿易の市場規模は約8,000億円で、ハイケムはその5%を占め、すでにこの分野のリーディングカンパニーといえる。しかし、化学品貿易の市場自体は飽和状態に達しており、過去十数年間あまり成長していないので、競合他社のビジネスを奪い取っていくことになる。東京の貿易事業がさらに発展するためには、化学品の貿易を基礎として、より多くの分野へ派生していくことに目を向ける必要があると考えている。
現在採用を強化している人材や業務内容は、化学品から医薬、農薬、健康食品などのライフスタイルに密接に関係する製品や高度化した電子材料の分野に移行してきている。これらの製品の市場規模は数兆億円に達し、化学品をはるかにしのぐ発展の余地がある。我々の業務方針も「8,000億円規模の化学品市場でのシェア獲得」から「数兆円規模の製品市場でのチャンス獲得」へと移行しなければならない。その上で、2030年までに東京の貿易事業の売上高1,000億円の突破を目指している。これは簡単に達成できる目標ではないが,地に足をつけて探求し,積極的に行動する勇気を持ちさえすれば,ハイケムにはそれを達成するのに十分な能力があると信じている。
龍総経理 上海支社の目標は、2030年に売上高50億人民元を達成することである。我々は伝統的な輸出業務からスタートし、その後代理販売、国内取引などの業務を発展させた。これらの事業は今後も維持していくが、現在のビジネスモデルと規模では、年率10%の成長を維持するのは難しく、新たな機会を探さなければならない。
我々は「We are the BRIDGE」というハイケムグループの基本的な経営理念と位置付けをもとに、今後は「日本の技術 + 中国市場」を中心に事業を展開していく予定だ。日本の化学品の生産技術は品質、安全など多くの面で競争優位性を備えており、それをもって生産された化学品は中国で大きな需要がある。これについては、ハイケムはここ数年様々な布石を打っており、C1化学事業や生分解性材料の事業など様々なテーマを有している。上海支社の今後の最も主要な任務と機能は、これらの事業で生産された製品を中国国内の市場で普及させることだ。一方で、中国市場に進出したい日本メーカーを開拓し、中国国内で適した生産工場を探して連携させ、日本メーカーの市場参入コストを下げ、製品を代理販売するなどの新たなビジネスモデルも模索していきたい。
——最後に、グローバル戦略についての考え方と、ハイケムの今後の位置づけや展望についてお聞かせください。
林本部長 売上高が数千億円レベル以上の商社は全てグローバルな事業展開を行っており、日中間の事業だけではこの規模を達成するのは難しい。日中両国におけるハイケムの強みを活かし、両国の製品を全世界に広めることが、グループ全体の発展に対する新たな突破口だと考えている。先に述べたように日中以外の国でバックグラウンドを有する人材の採用も、その計画の一環である。ここ数年、我々は積極的に北米、ヨーロッパ、東南アジアで業務展開を検討・実行してきた。顧客の需要に基づいて展開したのもあり、将来性のあるビジネスを自主的に探して投資した案件もあるが、グローバル化に向けてハイケムは一歩一歩着実に前進している。
我々はこれまでの成果に基づき引続き強みを発揮し、鋭い嗅覚、正確な判断力、効率的な実行力でチャンスをつかみ、空白を埋め、迅速かつ堅実な足取りでグローバル化に歩みだすべきである。そうすることで、ハイケムグループの「日中の架け橋」という価値に新たに「We are the BRIDGE」としての価値を生み出すことになるのだ。