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Interview 2022年11月29日

小野莫大小工業 高橋取締役インタビュー
「小野イズム」でハイラクト®を世界ブランドに

ハイケムは老舗繊維メーカー、小野莫大小工業有限会社(以下、小野莫大小工業)と2021年に、ハイラクト®の樹脂原料から生地までの一貫生産管理による品質向上を目的に業務提携を締結し、様々な編地を開発すると共に国内外のファッションブランドに向けた営業活動を行っています。1924年(大正13年)創業で、常に最高品質の生地を生み出すため、革新的な方法で開発を推進する同社は、海外の数々のトップメゾンからも一目を置かれる存在です。本日は、そんな小野莫大小工業の歴史とハイラクト®に懸ける熱い思いを同社取締役の高橋幸太郎氏に語っていただきました!

——まずは小野莫大小工業さんの歴史から伺いたいです。創業は1924年(大正13年)なんですね。

高橋 関東大震災の翌年になります。創業者は現社長のお父様で小野鉄五郎さん、もともとは東京都江戸川区平井の大地主だったそうです。関東の中心部で震災された方が、郊外の平井に避難所を求めて逃れてこられ、大地主であった鉄五郎さんが食料や寝る場所を提供しました。そのうちの一人が、自転車の荷台にメリヤスの機械を積んでニットを販売していたのだそうです。震災で何もかもが焼けてしまったので、下着や子供の洋服なんかに重宝していたのでしょう。これは商売になると算段をつけた創業者が、その方から機械を一台譲ってもらって、吊り編み機を用いた丸編みメリヤス生地の編立て工場を創業しました。

——なるほど、創業時は編み屋さんだったのですね。その後はどのような変遷を辿られるのですか?

高橋 当時より繊維産業の中心は関西地域で、東京には編み機を製造する会社もありませんでした。そんな中、創業者の小野鉄五郎さんが「どうしたら良い生地が作れるだろう」と考え抜いた結果、編み機を開発しようということになったのだそうです。そして、誕生したのが「小野式フライス編み機」です。

小野莫大小工場 佐原工場に設置された「小野式フライス編み機」

通常の編み機は「早く、大量に作る」ために作られている機械です。だから、出来上がってくる生地は伸縮が小さく、生地が薄くのっぺりしていたいかにも大量生産の生地。しかし、創業者チームは、多少効率が悪くても「良い生地を作る」ことにこだわりました。そして、編み目がきりっと引き締まった、まるでゴムのような非常に伸縮性の高い生地を編み出す機械を誕生させたのです。当時はゴムが高価で入手しづらかったため、コットンだけしか使わずにできた、伸縮性の高い生地は大変重宝されたそうです。現に、小野式フライスで編んだ生地は、何年使っても型崩れしない、コットンだけで体にフィットする編地を作り上げることができます。そして、この編み機は生地製品企画販売を行うようになった今も独自の生地づくりに生かされています。

——なるほど、もう、この辺から「小野イズム」をバンバン感じますね(笑)。そして小野莫大小工業様の代表作はなんといっても「コズモラマ」ですね。

高橋 そうですね、やっぱり世の中に当社を認知してもらったのは「コズモラマ」です。生地が特殊だし、生地や糸に名前を付けてブランディングするというのも業界としてはあまりない試みでした。

コズモラマ:インドの最高級超長綿100%使用し、小野莫大小工業独自の特殊加工を施した強撚糸による極薄の綿のカットソー。シャリ感のある繊細なタッチ・上品な光沢・ドレープ性が特徴。独自の糸づくりの技術によって、生地同士がはりつかない「ファスニングフリー」を実現し、2009年に特許を取得している。

——コズモラマの発想はどこから生まれたのですか?

高橋 実は、発想は「仏像の羽衣」です。
現社長の趣味が神社仏閣巡りで、仏像がすごく好きなんですね。それで「羽衣のような薄い生地をコットンで実現したい」と考えたのが始まりです。社長の開発テーマは「コットン100%でシルクタッチからウールタッチまで表現すること」です。社長は生地屋というより、芸術家なのだろうと思います。

——なんかすごい。色々なこだわりが詰まってそうですね。

高橋 そうですね。「コズモラマ」は最高級原料を中心とした「ワタ」選びと「糸加工」に特にこだわっています。僕たちの作る生地は、例えると「江戸前寿司」なんですよね。決して回転寿司ではない、全部がオリジナルです。他社さんがどれだけ安く効率的に作るかを求めている中で、うちはちょっと変わっています。社長が良く言っているのは「一流のものを作りたかったら、一流の素材を使わないとだめだ」ということ。素材選びについては、社長が様々なインドなどの産地からサンプルを取り寄せ、実際に編んでタッチを確かめてから採用しています。また、糸加工については実際に編み機にかける前にものすごい色々な工程を踏んでいます。

——すごいですね。高橋さんは海外展開の功労者だと伺いました。そもそも高橋さんはなぜ小野莫大小工業に入社されたのですか?

高橋 入社して20年になりますが、入社前は大学を卒業して服の販売員をやっていました。その中でモノづくりに携わりたいという思いが出てきて当社に入社しました。20年前に入社した時に感じたのは、ファッションが好きで生地作りに携わっている人があまりにも少ないということ。一様にいかに儲かるかを考えていて、洋服のことなんてどうでもいい。だから僕みたいなのが入社して「服ってこうやったらかっこよくなるよね」という視点を入れてきた。そういう姿勢こそが、各ファッションブランドからの信頼につながったのだと思います。

——ハイケムと一緒に、PLA繊維「ハイラクト®」の開発に乗り出していただけることになったのはなぜですか?

高橋 それこそ始まりは海外のハイメゾンがサステナブルじゃないと生地を採用しないと言い始めたことがきっかけです。だから、当社でもサステナブルな素材について僕たちも探し始めていました。でもどれも何かちがうな、と感じていたんです。そんな時に縁あってハイケムさんと出会いました。

PLAってなんかもうサステナブル素材の中でもちょっと違うジャンルですよね。洋服だけでなくプラスチック製品全般にも使える、こんな面白い素材はないと感じました。ハイケムさんと組めばそれができそう、いや絶対できると確信したので、ぜひ一緒にやりたいと思いました。PLAはコズモラマの次にメインにしたいというか、うちの一ページに載っけたい素材です

——PLAは繊維化するのに難しい素材だと思いますが、実際に取り扱ってみてどのような点が難しかったですか?

高橋 やはり、皆さんが言われているように糸の強度と耐熱性が低いことが弱点です。これはまだ克服途中ですが、1年で真っ黒の生地が作れるようになったのは成果だと思います。そもそも、PLAは繊維にしてはいけない素材だと言われていましたので…。

ハイラクト®生地(小野莫大小工業開発)

——わずか一年で克服できたのはなぜだと思われますか?

高橋 それはなんと言っても「PLAをなんとかしたい」という、ハイケムさんや僕たちチーム全員の強い想いですね。

「想いがないと人は動かない」と思います。

コズモラマの時もそうですが、海外のハイメゾンに入れるために、どうやって本部の人と知り合ったらよいか分からなかったので、とりあえず、パリのショップの本店に電話を毎日かけ続けました。よほど不憫に思われたのかある日、担当に方に繋いでもらえた。難しいことをやるときは、それくらいばかげたことをやらないと、『強い想い』がなかったらそんなことできません。

——開発から1年が経過しましたが、いかがですか?

高橋 この1年で色々なスタイルのPLAの生地ができあがり、完成してきています。去年と比べてもバリエーションが増えてきて、ちらほらと採用いただけるアパレルブランドも出てきました。そういう意味で去年の12月に比べたら状態としてはかなり良くなってきています。生地の状態もそうだし、選択肢も増えたことで、アパレルさんに見せたときの反応も変わってきていて、だいぶPLAを市場で受け入れてもらえるのではないかという感覚が出てきました。

ハイラクト®生地

——今後の目標を教えてください。

高橋 まずは、海外のハイメゾンに使ってもらうことですね。
海外に持っていくことのメリットは、日本の人が「いかに効率的にやるか」を最初に考えるのに対して、海外の人は、「製品をいかに高く売るか」を考えるんですよね。PLAをここまでモードに消化できているのは日本しかない、いや我々しかいない。だから、まずは我々の取り組みを海外の人に理解してもらい、消化してもらいたい。

そこから、次にハイケムさんが目指されているような50億とかのステップを一緒に目指していきたいです。PLAは生地だけでなく色々なものに代用できるので、様々なものをPLAに代替えしていく未来はきっと実現できると信じています。

夢物語ではなくてそういう風にしていかないといけない。今後、車は確実にEVになっていきます。変わっていくうちの一つがPLAなのではないでしょうか。世の中はどんどん変わっていくものです。

——小野莫大小工業さんと一緒に突き進んでいけるのは、とても心強いです!

高橋 ぼくが求めているのは、歩みを止めずに小野イズムを追求すること。こういう常に挑戦して皆がやっていない新しいことをやり続けるのが小野イズムなんですよね。

ポリエステルだって最初は「安かろう、悪かろう」だった、それが今みたいに発展してきています。世の中は変わっていくので、それをちゃんと理解して先をみてどうするかなんだと思います。


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