今回は、C1ケミカルの概要や注目されている背景、石油化学との違い、製造できる主な製品、そして未来の可能性について分かりやすく解説するとともに、ハイケムが取り組むSEG®技術やCO2資源化プロジェクトについても紹介します。
C1ケミカルとは?
C1ケミカルとは、炭素数が1つ(C1)の化合物を原料として、さまざまな化学製品を合成する技術の総称です。具体的には、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO2)、メタン(CH₄)、メタノール(CH₃OH)、ギ酸(HCOOH)などが代表的なC1原料にあたります。
図1:主なC1化合物の分子構造
私たちが普段利用している石油由来のナフサなどは、複数の炭素を持つ炭化水素の混合物で構成されています。そして、ナフサ等を利用する従来の化学産業の流れの中で各種プラスチックや化学品が生産されています。
一方、C1ケミカルでは、COやCO2、メタン、メタノールなどの炭素数1の化合物を出発点として、目的に応じた化学製品の合成を目指します。
つまり、炭素数1の分子を基礎単位として活用し、必要な化学品へと展開していく技術であり、原料の選択肢を広げられる点で、従来の石油化学とは異なる考え方に基づいています。
表1:従来型化学産業とC1ケミカルの比較
注目されている背景
C1ケミカルが世界的に注目を集めている理由の一つが、CO2を含む多様なC1原料から化学製品を製造できる点です。C1原料のなかにはCO2も含まれており、これまで排出・削減の対象でしかなかったCO2を「資源」として有効活用する道が開かれるからです。
脱炭素社会の実現が国際的な課題となるなか、CO2排出量の削減だけでなく、排出されたCO2を回収して化学製品の原料として再利用する「カーボンリサイクル」の推進が求められています。C1ケミカルは、まさにこのカーボンリサイクルを技術的に支える基盤として位置づけられています。
図2:C1ケミカルによるカーボンリサイクルの概念
また、化石資源への依存から脱却し、多様な原料から化学製品を製造できる体制を構築することは、資源の安定供給やエネルギー安全保障の観点からも重要です。石炭、天然ガス、バイオマス、さらには産業排気ガスやCO2まで、幅広い原料を活用できるC1ケミカルの技術は、持続可能な化学産業への転換を支える重要な技術の一つとして、世界中で研究開発と社会実装が進んでいます。
製造できる主な製品
C1ケミカルの技術を用いることで、幅広い化学製品を製造することが可能です。
図3:C1化合物から製造される主な化学品
エチレングリコール(EG)
ポリエステル繊維やPETボトルの原料として広く使われている基礎化学品です。一般に石油由来のエチレンから製造されていますが、C1ケミカルの技術により、合成ガスやCO2を原料として非石油由来のエチレングリコールを製造でき、中国ではすでに一定量のエチレングリコールが非石油由来の原料から製造されています。
メタノール
燃料や化学製品の中間原料として幅広い用途に活用できる化合物です。合成ガスやCO2から製造でき、さらにメタノールを出発点としてオレフィンや芳香族化合物など、さまざまな化学製品への展開が可能です。
合成燃料(e-fuel)
CO2と水素を原料として製造される液体燃料で、航空燃料や自動車燃料への活用が研究されています。既存の燃料供給インフラや内燃機関を活用できる可能性があるため、脱炭素社会への移行期における有力な選択肢として注目されています。
オレフィン・芳香族化合物
メタノールを経由して、エチレンやプロピレンなどのオレフィン、パラキシレンなどの芳香族化合物を合成する技術も開発が進んでいます。
ギ酸・酢酸などの有機酸
CO2やCOを炭素源として製造可能な有機酸も、C1ケミカルの製品群のひとつです。食品添加物や防腐剤、工業用途など幅広い分野で使用されています。
ハイケムのC1ケミカルの取り組み
ハイケム株式会社では、C1ケミカル技術を基盤としたさまざまな事業を展開しています。
ここでは、代表的な取り組みを紹介します。
SEG®ライセンス事業
図4:ハイケムのSEG®技術と応用分野
図5:ハイケムの「COre(コア)テクノロジー」相関図
ハイケムのC1ケミカル事業の中核をなすのが、SEG®(Syngas to Ethylene Glycol)技術のライセンス事業です。SEG®技術とは、合成ガス(一酸化炭素と水素)を原料として、ポリエステルやPETボトルの原料となるエチレングリコールを製造する非石油由来のプロセスです。原料には石炭、天然ガス、産業排気ガス、バイオマスなど幅広い資源を使用でき、原料の多様化を可能にする非石油由来の製造技術として注目されています。
この技術はUBE株式会社の技術をベースに、ハイケムが量産体制を確立し、ライセンスビジネスとして展開してきたものです。これまでに締結したライセンス契約数は23件に達し、年間約1,000万トン規模のプロジェクトを展開。SEG®製法で製造されるエチレングリコールは、中国国内で3割強のシェアを占めるまでに成長しています。
現在では、日中の技術を融合させ、東南アジアや中東へのグローバル展開も推進しており、マレーシアのサラワク州ではSEG®技術を活用したプラント開発に関するMOUを締結するなど、世界規模での社会実装が進んでいます。
CO2由来green MEGの開発
SEG®技術を基盤として、CO2を原料としたエチレングリコールの製造技術の開発にも取り組んでいます。現在は商業化に向けて取り組みを強化しており、将来的には、市販のエチレングリコールと競争可能なコスト水準での製造を目指しています。実現すれば、ポリエステル繊維やPETボトルといった身近な製品の原料をCO2由来で製造できるようになり、化学産業全体の脱炭素化に貢献することが期待されています。
NEDO事業
CO2からパラキシレンを製造する技術開発にも参画しています。パラキシレンは、PET樹脂の主要原料である高純度テレフタル酸(PTA)の原料です。この技術が実用化されれば、エチレングリコールに加え、PTAの原料となるパラキシレンもCO2由来で製造できる可能性があり、PET製品のさらなる低炭素化につながることが期待されます。
このプロジェクトは、企業や大学との共同開発で、NEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)に採択された国家プロジェクトです。ハイケムは、触媒開発と触媒のスケールアップ開発を担当しています。
2023年には、本プロジェクトのパイロットプラントにおいて、CO2由来パラキシレンの単離に世界で初めて成功しました。また、2024年にはこの素材を一部採用したスポーツクライミングの代表ユニフォームが実際に製作されました。2030年前後の商業化を目指して開発が進められています。
C1ケミカルに関心がある方へ
今回は、C1ケミカルの概要や注目されている背景、石油化学との違い、ハイケムの取り組みなどを解説しました。従来の石油・ナフサベースの化学産業から、CO2を資源として活用できるC1ケミカルは、カーボンニュートラルの実現に向けた次世代技術として世界的に注目されています。そして、廃棄物を資源とする循環型社会(サーキュラーエコノミー)という概念は、化学産業の構造そのものを変える可能性があります。
図6:ハイケムのカーボンデザイン事業全体像
<脱炭素と資源循環を前提に、製品、工程、供給網、回収再利用の仕組みを設計して事業化する取り組み>
ハイケムでは、以下の強みを活かしてC1ケミカル事業を推進しています。
① 豊富な実績(中国):2026年現在、SEG®ライセンス契約23件、年間1,000万トン規模のプロジェクト展開
② 技術力:独自の触媒技術、スケールアップノウハウ
③ グローバルネットワーク:日中の技術融合、東南アジア・中東への展開
④ 総合的なソリューション:技術ライセンスから触媒供給、プラント運営支援まで
ハイケムでは、SEG®ライセンス事業をはじめ、CO2由来のエチレングリコールやパラキシレンの製造技術の開発・社会実装を推進しています。C1ケミカルに関心をお持ちの方は、ぜひハイケムにお気軽にお問い合わせください。





