
【中国バイオテック特集】藻類は世界を救う!?
本インタビューでは、当社と戦略的パートナーシップを締結した中国の革新的バイオテクノロジー企業である光語バイオテック社の倪良平(ニ リャンピン)社長に、微細藻類の持つ可能性と産業への応用を実現する先進技術「フォトバイオリアクター」について語っていただいた。
楽清光語生物科技有限公司(光語バイオテック社)CEO 倪 良平
プロフィール
楽清光語生物科技有限公司(光語バイオテック社)CEO
1983年12月生まれ。上海水産大学にて水産養殖と藻類を専門に研究。2006年に同大学を卒業後は事業家として精力的に活動を展開。家電製品およびLED関連材料分野において、6社の企業を創業した実績を持つ。2012年に6社目となる光語バイオテック社を設立し、グローバルに事業を展開している。

「微細藻類」の持つ無限の可能性に着目し光語バイオテック社を創業
──倪 良平社長が光語バイオテック社を設立され、フォトバイオリアクター設備の製造販売事業を開始された理由を教えてください。
私は2006年に上海水産大学を卒業した後、わずか6年間で6つの会社を創業するなど、精力的に事業を展開しています。その過程で、家電製品の部品販売やLED材料の製造・販売、貿易事業など多岐にわたる事業を手掛け、日米欧のグローバルサプライヤーとの関係を構築しました。
この国際的なビジネスの経験やネットワークが現在の光語バイオテック社の礎となったといっても過言ではありません。当初は小規模プロジェクトとして開始したフォトバイオリアクター設備の製造販売事業について、2012年に独立した主力事業として確立し、これを第六の創業事業としました。
──微細藻類培養の分野に興味を持たれたのはなぜですか?
「光」の持つ本質的な可能性を見出したかったからです。私の重要な研究テーマの1つが「LEDの光エネルギーをいかに有用な生物エネルギーに変換するか」というものでした。そして、見出したのが「微細藻類」の持つ無限の可能性です。
水産養殖において微細藻類は水中の食物連鎖ピラミッドの最下層に位置し、太陽エネルギーを吸収できる重要な生産者です。この微細藻類が動物プランクトンや魚のえさになることで水の中の生態系を根本から支えています。また、微細藻類の光合成効率が非常に高い点にも注目しました。その優れた光合成効率は、タンパク質などの栄養素を低コストかつ効率的に作り出すことができます。そして彼らは、水中の食物連鎖の一次生産者としてだけでなく、バイオエネルギー、CO2削減、環境改善、さらにはバイオ医薬品など幅広い分野での応用が期待できます。すなわち、「光エネルギーとCO2を活用した有用有機物の創造」、これこそ私が光語バイオテック社を設立した理由といえます。
──光語バイオテック社の事業概要を教えてください。
弊社は微細藻類の産業応用に関する包括的なソリューションを提供しています。具体的には3つの事業を展開中です。1つ目は、フォトバイオリアクターで使用する優良種苗の提供です。そして、2つ目はフォトバイオリアクターに代表される微細藻類の培養設備の提供です。最後に3つ目は技術サービスの提供及び人材育成の支援です。
微細藻類の活躍の場は、水産養殖から人類の栄養源、カーボンニュートラルの領域まで
──「フォトバイオリアクター」とはどのような設備ですか?
「フォトバイオリアクター」は光とCO2を用いて、光合成によって微細藻類を培養する設備です。本設備では、光のエネルギーを入力エネルギーとして、また、CO2と水を原材料として使用します。これらの原材料が微細藻類の細胞に取り込まれることで「有機物」と「酸素」に加工されます。そしてこれらの作業を生産プロセスとして理解すると、フォトバイオリアクターはこれらの製造工程を効率的かつ安定的に生産するための優れた装置といえます。特に、ガラスまたは特殊樹脂製の密閉構造を採用することで、外部からの汚染(コンタミネーション)を防止し、培養環境を最適に保つことができます。これらの特長により、これまで大量に培養できなかった微細藻類の効率的な生産を可能としています。
──フォトバイオリアクターは多方面で活用できる可能性があるとうかがいました。活用が期待される業界、製品、サービスを教えてください。
第一に期待されるのが、水産養殖の分野での活用です。微細藻類は稚魚の高品質な初期飼料として、また水質調整剤としての機能を果たします。具体的な成功事例としては、中国の水産養殖会社における大規模なエビの養殖事業があります。微細藻類で育てられたエビの稚魚は、通常の飼料で育てられたものと比べて約5倍高い価格での流通を実現しており、顧客に対し明確な優位性を提供することができました。また、藻類は水中の溶剤酸素を上げ、水中のアンモニア性窒素や亜硝酸塩などを低減する効果もあります。
第二に、栄養補助食品としての展開です。微細藻類を錠剤やパウダーに加工し食品添加物として、また高品質なタンパク源としても注目を集めています。特に中東やヨーロッパではベジタリアン向けのタンパク源としての活用が期待されています。
第三に、カーボンニュートラル対策としての活用です。エネルギー企業や化学企業は大量のCO2を排出していますが、これらのCO2を藻類培養の原料として活用する方法です。これはCO2削減だけでなく、藻類の培養という付加価値を見出すことができ、環境負荷の低減と経済的価値の創出の両立に繋げることができます。特に中国市場では、収益性と環境貢献の両立が重視されており、その両立が見込める藻類培養はカーボンニュートラル実現に向けた理想的なソリューションといえるでしょう。
さらに、バイオプラスチックや化学品原料、バイオ燃料をはじめ、建築資材、医薬品キャリアやナノ材料などの先端部材としての活用も期待されています。
ただ、短期的にみると、製品が展開される範囲は川下の顧客がどのように恩恵を受けるかによって決まります。この2、3年において中国では、肥料、カーボンニュートラル、栄養源としての活用が微細藻類の三大活用分野といっていいでしょう。
中国のサプライチェーンを活用したコスト競争力と包括的なソリューション提供が強み
──他社製品と比較したときの御社製品の優位性を教えてください。
第一の特長は、中国の先進的なサプライチェーンを最大限に活用した、高品質かつコスト競争力の高いフォトバイオリアクター設備の提供です。ガラス管、ポンプ類、制御システムなどのハードウェアから、制御用ソフトウェアに至るまで、中国の製造基盤を活用することで、優れたコストパフォーマンスを実現しています。
第二の特長は、包括的なソリューション提供能力です。当社は、単なる設備販売にとどまらず、高度な研究開発力を基盤として、藻類種の選定から製造工程の最適化まで、顧客ニーズに応じたカスタマイズソリューションを提供しています。具体的には、研究開発用途に対しては先進的なセンサーや構造面のカスタマイズによる機能強化を、量産用途に対しては必要機能の最適化による効率化を実現し、それぞれの目的に最適化されたシステムを提供しています。
これらの強みを活かし、お客様の施設全体の投資対効果を最大化し、確実な投資回収の実現をサポートしています。
──今般のハイケムとの販売代理店契約締結について、ハイケムに期待することは何ですか?
当社は、環境課題の解決に資する優れた技術力を有しておりますが、単独での事業規模では、グローバル展開に制約がありました。このたび、グローバルな販売ネットワークと、エネルギー・化学業界における強固な顧客基盤を持つハイケム社との連携により、当社のフォトバイオリアクター技術を活用した環境ソリューションの世界展開を加速させたいと考えております。
本パートナーシップを通じて、環境負荷低減に寄与するフォトバイオリアクター設備の普及促進を実現していきたいですね。