HighChem Story

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第1回:「Leadership Bridge」
新社長就任メッセージ 代表取締役社長 高 裕一

2026年1月1日より、ハイケムの新体制がスタートします。

前代表取締役社長の高潮社長が代表取締役会長に就任し、これまで取締役 サステナベーション本部長を務めてきた高裕一が代表取締役社長に就任します。さらに、専務取締役の林勁松氏が取締役副社長に就任し、新たな体制が始まります。

新体制の開始に伴い、「ハイケムストーリー」では「BRIDGE TO THE FUTURE~新体制が描く未来への懸け橋~」と題し、連載企画として新体制の主要メンバーへのインタビューや座談会の記事を配信してまいります。連載の第1回は、新社長からのメッセージです。新社長の人間性や価値観、新体制の方向性や具体的な取り組みなど、盛りだくさんの内容となっておりますので、ぜひご一読ください。

はじめに

中国には「長江後浪推前浪」ということわざがあります。

直訳すると長江の後ろの波が前の波を押し進めていくという意味で、悠久の歴史の中で繰り返し行われてきた年長者と若者による世代交代の様を表しています。年長者は経験や知恵に富む一方で体力が衰え、若者には体力や新しいアイディアがあるものの経験や知恵が不足するのが常ですが、両者は常に争いながらも手を取り合ってきたからこそ、今日まで我々の暮らしは連綿と続いてきました。

社長就任の年である2026年、わたし自身は40歳という節目の年を迎えます。「現役世代を20歳から60歳とすれば、40歳という年齢はちょうど真ん中で、どちらの気持ちもわかるからちょうどいい」と言われることがあります。しかしわたしがいま自戒の念もふまえて感じていることは、40歳という年齢は実際には、このどちらからも最も遠い存在だということです。まだ少し感覚は残っているものの、すでに20歳の若者のフレッシュな気持ちは理解しきれませんし、60歳の諸先輩方から見ればどうしても経験不足の青二才です。まずはこの現実をしっかりと受け止めて、社長就任初年度は広く皆々様のところへ足を運び、年齢・立場を超えた様々な声を直接いただくことを大事にしたいと考えています。

「We are the Bridge」ハイケムの精神


わたしたちハイケムは、前身である21世紀商事の創業から数えて30年以上にわたり、日本と中国の間を、両国の社会と多くのお客様に支えられながら、化学、技術、そして心でつないでまいりました。

わたし自身について申し上げますと、中国でうまれ5歳で来日し、当時の日本と中国の経済格差を目の当たりにし、大きなギャップを体験しました。日本籍となってからも、自身の中には「日本」と「中国」というアイデンティティーが併存し、日々そのふたつが身体を両側から掴んで引き裂いていくような苦しさを感じていました。しかし、日本での幼少から高校までの学生生活、中国での大学生活、また日本に戻っての社会人経験など、両国を行き来しながらたくさんの人と触れ合いさまざまな経験を積むなかで次第に苦しさは薄れると同時に、両国の違いを理解し、お互いの文化や価値観を尊重し、相手の立場に立って考えることの重要性を学びました。

まただからこそ、ハイケムというプラットフォームにもとても大きな可能性を感じています。当社は日本勤務の社員約220名のうち、中国出身者が約7割を占めます。この規模で日本人と中国人が毎日同じ釜の飯を食べているというこの空間は、従業員たちの相互理解を厭わない不断の努力による、奇跡的なバランスのうえに成り立っていると思いますし、このバランス感覚こそがハイケムの価値を最大化している要因だと自負しています。

日本と中国は近いようで遠い国です。人の見た目はほとんど同じですが、社会形態や政治システムはもちろんのこと、文化や物事に対する考え方まで、似通っているところは極めて少ないです。そして直近では両国の関係に緊張が走っていることも事実です。

しかし、若者と年長者が常に争いながらも共存してきたように、世の中は一方の価値観、一方のルールだけでは成り立ちません。すべての物事には表裏があり、お互いが正しいと思うことを言うだけでは取引は成り立ちにくいものです。自身に意見があるように相手にも意見があり、それを擦り合わせる過程で理解し合い、双方にとって納得のいく結果になるよう高め合う。その姿勢が求められている時代ではないかと感じています。ことさら現代は、頭は自由に各々の価値観を持ちながらも、身体は経済で繋がってしまっている難しい時代です。この複雑な時代の中で、わたしたちは共存共栄の道を模索していかなければなりません。

ハイケムはその創業から今日に至るまで、日本と中国のあいだに広がるさまざまなギャップを見つけ、その懸け橋となることで成長してきました。そんな我々だからこそ、この時代において架けられる橋があります。日本と中国に限らずこれからも、互いが主張する自身の正義や利益のあいだにたち、その合意や妥協を引き出し、よりよい結果を導くこと。つまり、安心して渡れる懸け橋たり続けること。それこそがハイケムが社会に存在する意義であり、果たすべき使命であると信じています。

「All for 1 for All」 1兆円企業への道



わたしたちハイケムは長期の目標として「All for 1 for All」を掲げ、1兆円企業へ向けた取り組みを行っています。長期的かつ継続的な成長を目指すにあたり、「社会的に価値のある事業の推進」を念頭に置きたいと考えています。社会的に意味・価値のある事業だからこそ皆様とともに継続的な発展ができる。そしてハイケムには、そういった事業構造を生み出し、社会にとって価値ある事業を推進していけるだけの二つの可能性、大きな柱があると確信しています。

第一の柱:変化する日中の化学産業構造における柔軟性

現在、日本と中国の化学産業は大きな転換点を迎えています。

中国における化学産業の技術力向上は目覚ましいものがあります。大規模設備の新設や増設による生産能力増大は周知のとおりです。一方、日本では石化再編による川上の化学製品からの撤退が進んでおり、その流れと同時に、日本企業が技術・サプライチェーンとして差別化がしやすい、付加価値の高い川下製品へ注力していく動きが加速しています。しかしながら原料となる川上製品の調達は必要不可欠です。この需要にハイケムがしっかりと対応していくことは、単に経済的にというだけではなく、社会的にも大きな役割の一つです。

ITや金融などの分野が代表的ですが、いくらソフトパワーを強化しても、最終的にフィジカルなモノづくりができなくなっていくと、実態としての国力は急速に衰えます。資本効率だけをみれば製造業は決していい産業形態ではありませんが、経済成長の根幹である技術革新と生産力を支えモノづくりの力を日本にとどめ・発展させていくためにも、必要な原材料を高い品質で安定的に供給していくことはハイケムの大きな使命です。特にいま日中両国にとっても社会的要求の大きい健康・デジタル・環境の3分野に向けては、Health・DX・Sustainabilityの頭文字をとった「HDS」という標榜のもと、貿易業務の拡大だけではなく、製造機能の拡張と技術・事業への投資も推進しながら、お客様のニーズにこたえてまいります。

また、これまでは日本企業がその高い技術力とノウハウを携えて中国でOEM生産する流れが一般的でしたが、中国の技術力向上に伴い、今後は中国企業が日本でOEM生産という流れも増えていくでしょう。その時に、中国的な会社経営・事業運営の考えをそのまま日本に持ち込むだけでは、文化や考え方の違いから失敗することは目に見えています。この間に立って懸け橋の役割を果たし、Win-Winとなるビジネスにつなげることで、日本と中国双方の顧客から喜ばれ、信頼されるような、社会的にも価値のある事業を実現できると考えています。

第二の柱:C1技術の可能性

もう一つはC1技術が持つ可能性です。

カーボンニュートラルの本質はエネルギーではなく化学品にあると見ています。化学品は一見地味な存在ですが、現代の人類社会・文明にとっては、あらゆるところであらゆる物として姿形を変えながら我々の生活を支えているインフラのようなものです。仮に明日、化石資源が枯渇したとして、様々な議論はありますが、代替手段として極論で言えば電気は原子力発電を動かせばなんとかなります。しかし化学品はどうにもなりません。建物や家具家電といった大きなものから、衣服や洗剤など細かいものまでその原料がなくなるわけで、あらゆる生活コストは10倍では利かないでしょう。地球全体ではまだまだ人口増であり、新興国や発展途上国の目覚ましい経済発展や需要増大が続くなかで、化学品の原料を化石資源からどのように代替していくかは、これからの人類にとって大きな課題となります。

その課題解決への鍵となり化石資源の代替原料となるのが、同じく炭素を含んでいて自然界に大量に存在するCO₂やバイオ素材です。そしてこれらの原料を化学品へと変換する技術こそ、ハイケムが長年に渡り取り組んできた「C1技術」です。

CO2排出削減という文脈ではハイケムは中国において、このC1技術を使って製鉄所で利用されるオフガスを原料にし、エチレングリコールを製造しています。そして、すでにこの技術によって、毎年56万トンのCO2削減を実現しています。またCO2利用という文脈では、NEDOプロジェクトではCO2からのパラキシレン製造に取り組み、クライミング代表のユニフォームとして実装されました。またCO2からエチレングリコールを製造する技術でも、化石資源に経済の多くを依存している国地域から多くの引き合いをいただいており、数年内にファーストプラントが稼働できるよう、現地政府やエネルギー供給を行う大企業と連携しフィージビリティスタディを進めております。

このC1技術の発展とカーボンニュートラル社会の推進においても、日本の技術開発力と中国のスケールアップの力を組み合わせることは不可欠ではないでしょうか。そして最も重要な社会実装の場面においては、日中両国のルールを熟知し実践できるハイケムが果たせる役割は非常に大きいはずです。

たとえいつの日か化石資源がなくなったとしても、人類社会がつつがなく今の生活を続けていくために。ハイケムの技術の根幹であるC1技術の発展と商業化を着実に進めていきたいと考えています。

課題と挑戦 商社とメーカーの両立・インオーガニックな成長


ハイケムは創業以来、中国の経済発展を背景に、社員一人ひとりがビジネスチャンスを掘り出し掴み取るパワーを原動力に成長を遂げてきました。長年の歴史の中で培われた強固な顧客ネットワークと幅広い商品群は、ハイケムの商社機能において今も昔もそしてこれからも揺るぎない基盤です。

一方で、リーマンショックを機にわたしたちが直面した大きな課題は、商社機能だけではどうしても一つの商品の粗利が低く、為替変動などの影響を受けやすいということでした。当時、高潮社長は会社を持続的に発展させるためには、利益率の高いメーカー機能を新たに作り出す必要性があることを痛感し、2010年よりSEG®事業に参入しました。この新たな試みはお陰様で時代の流れに乗って大きな成果を生み出し、現在では年産約1000万トンのライセンス契約を締結し、触媒工場も開設するまでになりました。

しかし事業のライフサイクルを考えたとき、第2、第3のSEG®ビジネスの創出が急務であると見ています。わたし自身もこの数年率先してSEG®事業の海外展開やバイオ素材の開発、電池事業への参入などメーカー的な事業を推進してきました。

その中で感じたことはメーカー事業を機能させるため、つまりプロダクトアウトを成立させるためには商社機能とは異なる役割分担が必要であり、研究開発、製造、販売といった機能が全員で同じ方向を向き、同じ利益を目指さなければならないということです。ハイケムの成長を支えてきた企業風土は先述したように、全員が利益主体であるという文化であり、この主体性を持つ意識は今後も非常に大切な意識であることは間違いありません。しかし個の力という強みは、組織として一つの方向を目指す際には時として障壁になりうることもあります。

わたしたちの強みである個の力を活かしながら、組織として一つの目標に向かって進み、商社機能とメーカー機能を共存させ、さらにシナジーを生み出していく。成し遂げるべき目標として短期的なものと長期的なもののバランスを取りながらゴールに向かっていくということは非常に難しいですが、まずは社内から手を取り合う意識を新たに確実に歩みを進めていきます。

またこの二つの機能両立に加えて、事業買収やM&Aなどのインオーガニックな成長を志す選択肢も、念頭に置きたいと考えています。先述したように日中の化学産業は大転換時代を迎えようとしています。日本だけでは、もしくは中国だけでは勝ち目がなくなってしまった技術や事業も、技術の見方やそれを扱う人、マーケットやサプライチェーンを替えればたちどころに可能性が再起するということを、ハイケムはこれまで数えきれないほど経験してきました。この経験、この視点、この考え方もハイケムにとってかけがえのない財産です。

産業構造の大転換、そして地政学的要因によるサプライチェーンの大再編時代には、より多くのチャンスに出会うでしょう。これからは単に需給のギャップの間に立って橋を架けていくというだけではなく、その技術や事業もしくは企業自体が、ハイケムの仲間として志を同じにすることでさらに価値が向上するのであれば、積極的にこのチャンスを捉まえていきたいです。

最後に

「長江後浪推前浪」ということわざには、世の中は絶えず新しい世代が古い世代に取って代わるという以外に、もう一つとても重要な意味が含まれています。それは「時代は進歩していく」ということです。

大河も最初は一筋の細い支流、一滴の水にすぎませんが、水が川を流れれば浸食と堆積を繰り返し、山を削り大地の形さえも変えてきました。もしかしたら人間そのものは有史から同じことを繰り返し続けているかもしれません。しかし人類の文明は確実に進歩してきました。

文字を生み、鉄器で田畑を耕し、車輪で貨物を運び、羅針盤で大海を渡りました。蒸気でタービンを回し、3軸制御の翼で空を駆け、ついには月面に一歩を刻み、絶対不変速度の光が世界を情報でつなぎました。そしていま、化石資源からの脱却、人工知能やロボティクスや量子技術の進化、核融合による無限のエネルギーへの挑戦などが始まろうとしています。

一人一人は微力で愚かでも、集まる力、手をとりあえる力こそが、人間の力です。
人間にとって歴史は同じ繰り返しの円環の輪ですが、人類はらせん状に進歩していきます。

化学産業にとどまらず、日本と中国の産業の関係はいま、大きな転換点を迎えています。そして日本と中国の強みはまったくといっていいほど違っています。ハイケムがこれらの強みを引き合わせ、力に変えることができれば、両国の社会だけでなく、激動の時代にとっても不可欠の存在になれると信じています。

これからもわたしたちの存在意義である「We are the BRIDGE」の精神のもとに、日中両国の手と手を結び、世界に一つでも多くの懸け橋を築いていきたい。この想いをステークホルダーの皆さんと絶えず共有し、これからのハイケムの発展を率いていく所存です。

未来は必ず良くなります。