自社開発「ペロブスカイト太陽電池 正孔輸送材料 Spiro-MeOTAD」
グリーン化の切り札「ペロブスカイト太陽電池」実用化を支える
ペロブスカイト太陽電池とは、現在主流であるシリコン型太陽電池とほぼ同等の高い効率で太陽光から電気に変換が可能で、室内などの低照度環境でも高い変換効率を示す点が特長だ。シリコン型の太陽電池では難しい雨や曇りの日でも発電が可能で、製造温度が低く設定できるため、フィルムにも展開可能で、折り曲げられる太陽電池としても注目を集めている。
ハイケムでは、そんな今大注目のペロブスカイト太陽電池の重要部材を自社で開発し、グローバルに展開している。本日はこの重要部材のキーとなる技術を握る、電子・環境材料事業部の張部長にお話を伺った。
お話を伺った人 電子・環境材料事業部 張事業部長
——シリコン太陽電池とペロブスカイト太陽電池の違いを教えてください。
シリコン太陽電池は、長年にわたり商業化されている太陽電池の一種であり、シリコン半導体からできています。一方、ペロブスカイト太陽電池は比較的新しい技術であり、ペロブスカイトと呼ばれる新しい光吸収材料を使用しています。ペロブスカイト太陽電池は、従来の太陽電池と比較して、高効率、高い柔軟性を持ち、低コストでの製造が可能で、特に、低光照条件下でも動作する能力が注目されています。よって、建物の外壁や防音壁、狭い領域などに応用することができ、従来の太陽電池と置き換えることができる、まさに未来の素材と言えます。
——ペロブスカイト太陽電池の現在の状況を教えてください。
今は、ペロブスカイト太陽電池の開発に取り組む企業が、実用化に向けて実証実験を行っている段階です。2023年5月に、積水化学さんが東京都と共同で「ペロブスカイト太陽電池の実用化に向けた検証キックオフ」をされましたね。また、リコーさんはJAXAと共同で宇宙利用へ向けた開発を推進しているようです。
日本だけでなく、中国や欧州などでも実用化へ向けた取り組みは盛んで、中国では、従来のシリコン型とのハイブリッド製品などの研究開発も行われています。
——正孔輸送材料とはどのようなものですか?
正孔輸送材料は、光が当たったときに、そのエネルギーを電気エネルギーに変換するデバイスで使われる特別な材料です。この材料は、太陽光などの光を受け取ると、正の電荷を持つ「正孔」をスムーズに動かすのに役立ちます。イメージとしては、太陽の光が材料に当たり、それによって生じた正孔が、材料内を通って電気を生み出すための「通路」を素早く通るようなものです。これにより、太陽エネルギーや光エネルギーを効率的に電気エネルギーに変換することができます。
——自社開発「ペロブスカイト太陽電池 正孔輸送材料 Spiro-MeOTAD」とはどのような製品ですか?
自社開発「Spiro-MeOTAD」はペロブスカイト太陽電池の重要部材である正孔輸送材料です。製品の特長は、ハイケム独自の合成技術及び生成技術により高純度を実現しています。また、いつでも量産化に対応できるような体制を構築しており、ペロブスカイト太陽電池が実用化された際にも安定供給が可能となります。更に、独自の技術により低価格を実現しているため、お客様の製造コスト削減にも繋げていただける製品です。
そして何より、このような研究開発段階にある新しい技術の製品に対しても、ハイケムの強みであるスピード対応が可能であるということも、顧客にとってはメリットだと思っています。
——自社開発に繋がった経緯を教えてください。
電子・環境材料事業部として、今後の成長戦略を考えたときに、持続可能で地球環境に貢献できるような、サステナブルかつグリーンな事業を構築していく必要があると考えました。そんな時、自社で蓄積してきた技術の中に、このペロブスカイト太陽電池材料に応用可能なものがあると分かり、自社開発に繋がりました。
2018年から開発をスタートさせ、2022年のネプコン ジャパンで初出展を果たし、大きな反響をいただきました。
——今後の目標は?
現在、国内外の研究機関やベンチャー企業などがペロブスカイト太陽電池に関する研究開発を加速しています。現在のハイケムの取り組みは、研究機関や企業とうまく連携しながら、取り扱う製品を正孔輸送材料だけでなく他の材料に繋げているところです。また、設備メーカーとも連携していて、取り扱いの幅を設備にまで広げました。今後は、材料・設備から技術支援まで、ペロブスカイト太陽電池のことなら、ハイケムがワンストップで提供できるといったような体制を構築していきたいですね。そうすることで、新規参入の企業様に対しても、利便性を高めることができます。
ハイケムの取り組みで、この素晴らしいペロブスカイト太陽電池が一日も早く実用化に繋がり、サステナブルな地球環境、すなわち、よりよい子供たちの未来に繋げていけるといいと思っています。