AI時代の半導体を「材料」から支える
こうした要求に応えるには、材料を調達するだけでなく、技術や品質への理解、メーカーとの綿密な連携が欠かせません。ハイケムは、日中のネットワークと幅広い化学分野の知見を生かし、材料の調達から技術的な課題への対応まで、お客様の製品開発や安定生産を支えています。
「産業の米」とも呼ばれる半導体を、化学品商社として材料の側面からどのように支えているのか。電子材料事業部の張事業部長と安部部長に、調達や品質対応におけるハイケムの強みと、半導体・電子機器の先進実装を支える材料の共同開発について伺いました。
厳しい品質要求に応える、化学の知見と技術対応力
─半導体材料を調達・供給するうえで、特に難しいのはどのような点ですか?
(張)半導体製造の前工程、つまりウエハー上に回路を形成する工程では、使用する材料にも極めて高い純度が求められます。そして、微量に含まれる金属などの不純物についても、厳格に管理する必要があります。
そのため、私たちのように日中貿易を主軸とする商社にも、材料に関する専門知識や技術的な対応力が欠かせません。各国の市場動向や規制への理解も必要です。
ハイケムは、日本と中国での製品供給や受託製造を通じて、品質管理や合成技術に関する知見を培ってきました。この蓄積が、電子材料分野でも大きな強みになっています。
1. 医薬分野で培った合成技術や品質管理の知見を生かす
(張)ハイケムは、ファインケミカルをはじめ、エレクトロニクスからライフサイエンスまで、幅広い分野で化学品を取り扱っています。それぞれの分野に専門知識を持つ人材がおり、異なる分野の知見を生かせることも強みです。
例えば、私は以前ハイケムの医薬課に在籍していました。その経験から、医薬品分野の合成技術や品質管理に関する知見を持っています。
医薬品分野の受託製造では、製造工程や品質を厳格に管理することが求められます。半導体材料とは要求される基準が異なりますが、そこで培った合成技術や不純物管理の考え方は、高純度が求められる半導体材料を取り扱ううえでも生かすことができます。 分野を横断して知見を共有できることが、ハイケムの技術対応力につながっていると思います。
2. 技術と言語の両面に精通した人材が、日中の橋渡しを担う
(安部)ハイケムには、中国語を母語とする社員や、理系の専門分野で修士以上の学位を取得した社員が多く在籍しています。加えて、私自身もそうですが、メーカー勤務や商社でさまざまな業界を経験した後、ハイケムにキャリア入社した人材も多くいます。こうした人材が、専門知識と言語力を生かして技術営業を担っています。
半導体材料のような専門性の高い分野では、言葉を訳すだけでは十分ではありません。お客様が求める品質や技術的な条件、その背景まで理解したうえで、日中のメーカーに正確に伝える必要があります。
ハイケムでは、技術と日中両言語に精通した社員が、お客様への対応やメーカーとの交渉、通訳を担っています。そのため、認識のずれや確認の手間を減らし、技術的なやり取りを円滑に進めることができます。
「スピード」「情報力」「安心感」で、材料調達の課題に応える
─半導体材料を取り扱う商社に、お客様はどのような役割を求めているのでしょうか?
(張)半導体材料をはじめとする電子材料の分野は、技術の進歩が非常に速い世界です。そのため、お客様からは「スピード」と「情報力」が求められます。そして、それらを通じて「安心感」を提供することが、私たち商社の役割だと考えています。
1. 技術への理解が、対応の「スピード」を生む
(張)半導体業界では、技術や市場の変化に対応し続けることが欠かせません。
ハイケムには「HighSpeed HighTech HighChem」という標語がありますが、お客様からも対応のスピードを評価していただくことが多いと感じています。
その背景にあるのが、専門知識と言語力を持つ人材です。一人の担当者が営業窓口として、技術的な説明や日中間の言語対応まで担えるため、お客様の要求を理解し、メーカーに正確に伝えられます。
担当者間の引き継ぎや確認の手間を減らし、技術課題への対応を速められることが、やはりハイケムの強みだと思いますね。
2. メーカーや設備の「情報力」が、新しい挑戦を支える
(張)特に半導体分野における電子材料は、お客様ごとに求める品質や仕様が異なるため、柔軟な対応が必要です。ハイケムは、日中のネットワークから得られる情報を生かし、品質、コスト、製造条件などを踏まえて調達先や受託製造先を提案しています。
新しい開発テーマでは、将来の需要がまだ見通せず、設備投資の判断が難しいこともあります。一方、私たちが取引する中国メーカーの中には、豊富な資金力を生かし先行投資によって整備した設備に余力がある企業もあります。
こうした情報をいち早く把握できれば、既存設備を活用して、新規設備投資を抑えながら開発や試作を進められる可能性があります。もちろん、用途に応じた設備の適合性や品質管理体制の確認は必要です。
お客様の新しい挑戦に対し、どのメーカーや設備が活用できるのか。その選択肢を示せることが、ハイケムの「情報力」の価値だと思います。
3. 正確な情報と迅速な対応で、「安心感」を提供する
(安部)日中ビジネスにおいて、お客様が求めているのは、突き詰めると「安心感」だと思います。
化学品の取引では、危険物の取り扱いや化学物質に関する法規制、輸出入の手続き、関税、日本のキャッチオール規制や中国のデュアルユース品目に関する輸出管理など、確認すべき事項が数多くあります。規制や事業環境の変化に、不安を感じるお客様もいらっしゃいます。
私たちは、日本市場での販売を始めたい・拡大したい中国メーカー、中国市場での販売を始めたい・拡大したい日本メーカー、そしてそれらの材料・設備を購入するお客様に対して、正確でタイムリーな情報を届けることを大切にしています。
技術と言語に精通した人材が活躍する商社は他にもあると思いますが、ハイケムは、日本と中国の双方と密に連携し、状況や課題を透明性のある形で共有することができます。その中でも、中国企業と長年にわたり築いてきた密接な関係性は、ハイケムならではの強みだと思います。社員もその強みに自信と誇りを持って業務に取り組んでいます。その積み重ねが、お客様の安心感につながっていると感じています。私自身、以前に日本の化学品商社に勤めていましたが、ハイケムの中国企業との関係性は明確な差別化になっていると思います。
(張)供給に問題が生じるような危機の際にも、迅速な対応が重要です。ハイケムは、東日本大震災やコロナ禍など、供給網が混乱する局面でも、お客様の安定調達を支えるために対応してきました。
危機の際には、状況をいち早く把握し、代替の調達先や供給方法など、実行可能な選択肢を提案することが求められます。日頃から築いてきたネットワークと技術的な知見を生かし、お客様の事業継続を支えることを大切にしています。
(安部)日本と中国の双方に体制を持つハイケムだからこそ、現地の状況を把握し、日本のお客様・中国のお客様、双方の疑問や懸念に沿って説明できるのだと思います。
日々の取引や、困難な局面での対応を通じて得られる信頼が、「困ったときに、まずハイケムに相談しよう」と思っていただける関係につながるのではないでしょうか。
─半導体の前工程に関連する分野では、日中のビジネス機会をどのように見ていますか?
(安部)中国では、半導体産業の育成に向けた投資が続いています。一方、原子・分子レベルでの精密な制御が求められる材料や、高度な加工技術を生かし最先端顧客とのすり合わせから生まれる新たな精密材料、そして半導体製造装置の分野には、日本企業が競争力を発揮している領域もあります。
こうした日本の材料や製造装置を中国市場につなぐことも、ハイケムが取り組むべき役割だと考えています。日中のネットワークと技術への理解を生かし、日本企業の中国市場開拓を支援していきたいですね。
調達で培った知見を、先進実装材料の開発へ
─ここまで、材料の調達や技術対応における強みを伺いました。ハイケムはさらに、半導体・電子機器の先進実装を支える材料の共同開発にも取り組んでいます。開発に乗り出した背景と、具体的な製品について教えてください。
(安部)生成AIの普及に伴い、AIサーバーを支える半導体には、より高い処理性能が求められています。一方で、最近話題のデータセンターによる電力の大量消費や発熱への対応も大きな課題です。
性能を高める方法も、半導体チップの微細化だけではありません。複数のチップを一つのパッケージに組み合わせて性能を高める実装技術や周辺部品の高性能化の重要性も増しています。
こうした変化に伴い、材料に求められる機能も多様化しています。熱を効率よく逃がす放熱材料に加え、高速通信における信号損失を抑える低誘電・低損失材料、電源の安定化に用いられる積層セラミックコンデンサ(MLCC)などの微細部品、さらにそれらを確実に接合する材料・工法など、さまざまな技術課題への対応が必要です。
ハイケムでは、材料の調達や技術対応を通じて得られるお客様の課題を、製品開発にも生かしていきたいと考えています。
(張)その取り組みの一つとして、2025年には、共同開発による絶縁放熱シート「HC-THERMALシリーズ」と「新型はんだペースト」を発表しました。
HC-THERMALシリーズは、絶縁性を確保しながら熱を逃がす材料です。一方、新型はんだペーストは、Mini/Micro LEDや高速通信機器、ウェアラブル端末などの接合用途に対応しています。
このように、半導体の実装や電子機器を支える材料へと、開発の領域を広げています。
─共同開発を進めるうえで、ハイケムのネットワークや技術力はどのように生かされていますか?
(張)半導体分野では、優れた技術を持つベンチャー企業や若い技術者が台頭しています。ただ、良い技術があっても、それをお客様に届け、実際に使っていただくまでには、さまざまな課題があります。
そこでハイケムと連携することで、私たちの販売網や事業基盤を活用してもらえます。技術を持つ企業や技術者にとっては、新しい技術の開発と社会実装に挑戦する機会になりますし、ハイケムにとっても、お客様に提案できる材料や技術の幅が広がります。
こうした連携では、ハイケムの社内にも相手の技術を理解できる技術者がいることが重要です。技術の特長や課題を理解し、お客様の要求と結び付けることで、開発側と使う側の橋渡しができます。
材料の提案から評価・改良まで、お客様とともに取り組む
─開発した材料をお客様に使っていただく際には、どのような強みを発揮できるのでしょうか?
(張)半導体材料を取り扱う商社には、製品の仲介に加え、技術的な課題への対応も求められています。材料の特性や用途を理解した技術営業が、お客様に適切な助言や提案を行うことが、ますます重要になっています。
新しい材料は、お客様の製造条件や使い方によって、期待する性能を十分に引き出せない場合があります。そのため、製品をお届けするだけでなく、どう使えばよいのかを一緒に考えることが大切です。
ハイケムには技術を理解する人材が豊富に揃っているので、お客様の課題を伺い、使い方や材料の選定について技術的な提案ができます。試作と評価を重ね、その結果を改良につなげることで、私たち自身も知見を蓄積していけます。
また、必要な性能に対して材料の使用量などに見直しの余地があれば、品質や信頼性を確保しながら、コスト削減につながる提案もできます。
この分野では、お客様ごとに求められる性能や製造条件が異なり、カスタマイズが必要な場面も多くあります。一つひとつの課題に寄り添って対応できることが、ハイケムの大きな強みだと思います。
多様な人材の力を、材料の新しい価値につなげる
─最後に、半導体材料分野でハイケムが大切にしていることを教えてください。
(張)ハイケムの強さは、日本と中国をはじめ、異なる背景や専門性を持つ社員がチームを組み、それぞれの強みを生かしていることに尽きると思います。
技術に詳しい人、メーカーとの交渉が得意な人、お客様の課題をくみ取れる人。そうした人材が力を合わせることで、一人では解決できない課題にも取り組めます。
そして、お客様の悩みに真摯に向き合い、「どうすれば解決できるか」と知恵を絞ること。その姿勢も、ハイケムの強さです。
これまで培ってきた調達力と技術力、そして人材の多様性を生かしながら、材料の供給から開発まで、お客様の新しい挑戦を支えていきたいと考えています。


