日中で培ったネットワークを武器に
インドでは自動車産業のEV(電気自動車)への移行が政府の肝入りで急ピッチで進められ、2030年にはEVを新車販売の30%以上まで伸ばそうという目標を掲げています。そんな中、高品質のEV及びESS(蓄電池)の部材などを求めているインド企業が注目したのは、ハイケムが長年にわたり築き上げた日本や中国に持つネットワークでした。
インドという巨大市場にチャレンジするのは、ハイケムの電池材料事業部。即戦力となるインド出身の社員も初めて採用し、今年2024年2月に社内に設置されたグローバル事業部とも連携。会社を挙げた挑戦を続けています。
独特のビジネス慣習もあるインドという巨大市場にどう参入していくのか。最新の取り組みについて中心メンバーたちに聞きました。
左から 電池材料事業部・開発部 王課長、グローバル事業開発部 石原部長、電池材料事業部 北田事業部長、キショーさん
自動車のEV化に動き出した巨大市場 ハイケムのネットワークにインドが熱い視線!
── ハイケムがインドの電池市場に参入を進めている背景には何があるのでしょう?
北田 きっかけは2022年ごろインドの企業から問い合わせが多数有ったことです。インド政府がEVを輸入には頼らず自国の主要産業として国内での製造を進めていくという政策を打ち出したものの、インドのEV関連企業単独ではまだ技術力が不足し、EVに使われる電池の部材などを自国で調達できない現状がありました。インドメーカーがその分野に強い企業を探していたところ、或る米国資本のコンサル が日本や中国の企業とのネットワークで長年の蓄積があるハイケムに着目したようです。そのコンサルの紹介で数多くの企業から相談を受け、実際に東京や上海で商談も行いました。
石原 インドはすでに14億を超える世界最大の人口を有し、現在も増え続けています。GDPは世界5位。2023年度の成長率は10.2%と高い経済成長を続けている巨大市場です。そのインドでは政府が2030年までに新車販売の30%以上をEVにするという高い目標を掲げました。世界のEV市場を席巻している中国メーカーの参入が現時点では少なく、欧州や日本などの自動車メーカーにとって潜在的な市場ですが、すでに激しい競争が始まっています。そこにハイケムも得意分野を生かして本格的に取り組んでいるのです。
得意分野のリチウムイオン電池部材でインド市場のサプライチェーン構築へ
石原:「原料から製造に必要な設備までのサプライチェーンの構築に協力することがハイケムには可能」
── インドのEV市場ではハイケムの得意分野がどのように生かせるのでしょうか?
石原 それはEV及びESSの要となる電池の部材です。インドはリチウムイオン電池も含めてEV及びESSの完成品まで国内で製造するのを目標としています。この電池材料の分野でハイケムの持つ強みが生かすことを考えています。
① ひとつはセル向けの「材料」です。セルというのは電池を構成する単位となるもので、このセルを複数接続させた集合体がリチウムイオン電池となります。例えばセルの中で使われている「電解液」では、DMCやEMCなど数多くの電解液向け溶媒を供給してきた実績があります。ハイケムはこの「電解液向け溶媒」をはじめとした多くの電池材料の供給において日本や中国、韓国において強靭なネットワークがあり、インド企業が求めている最適な部材にアクセス、それらをきめ細かく紹介・提案が可能です。
② さらにセルの製造設備の面でも貢献ができると考えています。安価で競争力が高く、品質でも満足してもらえるものを私たちのネットワークを使って用意できます。また、日本や中国企業が培ってきた電池材料を製造するノウハウについて技術ライセンスを行うことも可能です。実際に日本の電解液向け溶媒における技術ライセンスを中国の大手国営企業へ複数ライセンスを実施した実績を有しています。
以上のようにEVの要となる電池の分野で原料から製造に必要な設備までのサプライチェーンの構築に協力することがハイケムには可能なのです。
インドでの電池事業経験が豊富な社員も 迅速に現地での営業を展開
インドの電池展示会:India Energy Storage Week 2024
── 現在インドではどのような営業活動を行っているのですか?
石原 このチャンスを生かそうとすでにインドで積極的に動いています。私は日本の化学メーカーに所属し10年前からインドで電池事業に携わった経験があります。現地の業界の動きを理解しており、長年構築してきた人脈も有効に活用するようにしています。
そこで、まずはEV、二輪、三輪、それに商業用や蓄電池といった用途ごとにターゲットとなるインド側の企業の選定を行なうことを考えています。また材料、セル、電池パックの分野ごとに多くの企業が存在しており、それぞれの分野、企業が求めている商材や技術を確認しています。それに合わせて技術的な協力をしていただく日本や中国、韓国のパートナー企業を選んでいくことも重要です。
現在はインドに足繁く通ってインドのメーカーにアプローチし、具体的な協議も始めています。今年2024年7月には現地での講演会や展示会にも参加。またハイケムの現地で開発支援ができるエージェント候補を選定することも急いでおり、有能なエージェントを確保できそうです。各国の企業が激しくせめぎ合うインド市場。ハイケムは他社に先んじるよう事業展開を迅速に進めています。
インドのビジネス文化との懸け橋に インド出身の即戦力を採用
── インドのビジネス文化との違いはありますか?
王 大きなチャンスがあるインド市場ですが、インドはビジネスの進め方でも独自の文化があり戸惑うこともあります。特に感じるのは意思決定のスピードの違いです。例えば中国では企業のトップクラスとの交渉の場で契約が即決し、そのまま取引が迅速に進むことがしばしば。しかしインドでは交渉の段階でよい反応があってもすぐには決まりません。時間をかけて他の企業の製品と慎重に比較するなど決定までに時間がかかるという印象です。
また、英語で商談している間にインド側の人たちが私たちをよそに自分たちの言語だけで話すということもよくあり、どんなことを話しているのか気になります。そこで私たちもインド出身の方に仲間に入ってもらいインドのビジネスマナーをより深く理解しようと考え、即戦力となる人材を採用しました。新たに採用したキショーさんは現地の言語だけでなく日本語や英語など6つの言葉を操ります。一緒にインド企業と商談する際にインドの公用語のひとつであるヒンディー語で会話を交わすととても喜ばれ、相手側の考えもより理解しやすくなりました。今後もキショーさんの活躍にとても期待しています。
インドで現地企業を視察するキショーさん
<<写真のキャプションとして入れたい>>
インドはビジネスチャンスの宝庫 参入はハイケムに相談を
北田「大きく成長していくインドの電池関連市場で、ハイケムは地域と地域の懸け橋となる」
北田 インドのEV市場は裾野がとても広く、四輪の自動車だけでなく、タクシー代わりに広く利用されている三輪、それに二輪のバイクの需要もあります。それらの電動化が同時に進んでおり、14億という巨大な人口が日常的に使う移動手段で今後、多くの電池が必要となる見通しです。
他にもトラクターなどの農業用機械、クレーン車といった建設土木向け機械、工場で使われるロボットなどにも電池が使われるようになるでしょう。また、風力発電や太陽光発電などの再生可能エネルギーを有効活用するためにも膨大な蓄電池が必要となります。
このように、インドでの電池ならびに電池部材の需要は極めて大きくなるものと予想されます。大きく成長していくインドの電池関連市場に対して、ハイケムは地域と地域の懸け橋としてしっかりとサービスを届けていきたいと思っています。
インド出身の期待の即戦力
キショーさんに独占インタビュー!
キショーさんに独占インタビュー!
私はインド南部にある都市で、インドIT産業の中心地として知られるベンガルール(旧称バンガロール)で生まれ育ちました。大学で機械エンジニアになるための勉強をしているときに、インドの人材を日本企業に紹介するコンサルティング会社からチャンスをもらい、卒業後すぐに来日しました。
日本以外の国という選択肢もあったのですが、日本は高い技術力を持つ国としてずっと憧れを持っていました。また母が外国に行くならできるだけベンガルールから近く、安全で治安の良い国にしてほしいと強く求めていたので日本一択。私は日本に来て、九州で1年間日本語を勉強した後、大阪のメーカーで機械設計のエンジニアとして従事しました。そのうち機械の設計だけではなく、インドで市場開拓するプロジェクトも任されるようになり、事業をグローバル展開させていく面白さを知りました。
そのタイミングでヒンディー語を使えるエンジニアが欲しいというハイケムの募集が目に止まり、応募したところ面接を経て採用。今年2024年からハイケムの一員として働いています。
ハイケムで働いての印象は自由度が高いということです。上司の王さんが目標を明示し、結果を出すまでのプロセスをある程度、任せてくれるので信頼されていると感じ、それがやりがいにつながっています。また社内の風通しがよく、寛容で優しい人が多いと感じています。ストレスのない環境で働け、とても充実した日々です。
ハイケムのインドでの事業に貢献し、自分自身の成長にもつなげていきたいと考えています。
メンバー紹介
電池材料事業部 北田事業部長
大手化学メーカーに三十余年勤務し、電池などの新エネルギー関連事業を所管したのち、2022年にハイケム入社。既存の電池材料に加え、新規事業も率いるハイケムの電池事業のトップ。
グローバル事業開発部 石原部長
大手化学メーカーにてグローバルな事業アライアンス構築や製品規格の標準化などに従事。2024年2月にハイケム入社し、グローバル事業開発部部長に就任。
電池材料事業部 営業部 王課長
中国の大学を卒業後新卒でハイケムに入社。ハイケムに入社後は半導体事業などの新規事業を開拓。現在は電池材料事業部の営業部で新規開拓を率いる課長。
電池材料事業部 営業部 キショーさん
インドのバンガロール出身。大学卒業後就職で来日。大阪のメーカーにてエンジニアを経て2024年にハイケムに入社。